【イベントレポート】アンケート結果からホームセンターが若年層顧客の支持を得るためのポイントを考える

  • マーケティング
チェーンストア各社では、人口減少社会の中で、主要顧客層の高齢化を課題と捉え、弱年齢層の顧客獲得、関係強化を検討されておられる企業が増加しています。メグリ株式会社が調査したホームセンター利用者に対して実施したアンケート調査の分析結果を中心に、世代によるリアルとデジタルの捉え方の違いを明らかにし、どのような施策を検討すべきかを考えてみました。

市場状況

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実際のアンケートをご紹介していく前に、まずはホームセンター、スーパー、ドラッグストアの市場の状況を共有するところから始めていければと思っております。
状況把握を行っていくための手がかりとして、チェーンストアの大手各社様がホームページで毎月公表している店舗の売上、客数、客単価の昨年同月比というものを参考にしていきたいと思います。
例えば、平和堂のホームページなど、各社で掲載は様々ですが、大体いろんなホームセンター、ドラッグストア、スーパーマーケットでこのような形でホームページに毎月の昨年同月比が掲載されています。これを月次で追って計測をしているのですが、このデータをご覧いただこうと思います。これからご覧いただくグラフの意味が分かりにくいので、どういう調査をしたのかということを先に説明します。
例えば、2020年3月が昨年同月つまり2019年3月との比較が90%だったとします。2021年3月も同じく2020年3月に対して90%だったとしたら、2019年3月を100とした場合に2021年の3月は90%×90%で81%という形になります。従って、100を超えていれば2019年度よりも好調、数値がいいということになります。
これを踏まえた上で、数値を見ていければと思います。

まず客単価から見ていきます。真ん中の赤い線が100%になります。客単価については業種とも100%を超えて右肩上がりの傾向にあるという風に言えるかと思います。
ただ、この要因は買い上げ点数が増えたとか、これまで以上に高額商品が売れているというよりは、基本的には物価上昇が背景にあると考えた方が自然かと思っております。
続いて客数です。ドラッグストア(緑の線)は2023年の後半あたりから2019年水準を超えてきています。スーパーマーケットも昨年後半あたりからじわっと増えてきているところですが、ホームセンターに関しては2019年水準をかなり下回っている現状が続いているということが言えるかと思います。
最後が売上高です。ご覧の通り、スーパー、ドラッグストアは特に2023年以降、右肩上がりになっておりますが、ホームセンターは2019年水準にとどまっているような形です。

最後に売上高です。売上高を最後にしたのは、先に見ていただいた客単価×客数がイコール売上と見ることができるからです。
スーパーとドラッグストアは客単価が伸びて客数が横ばいなので売上は右肩上がり、ホームセンターは客単価上昇と客数減が相殺するような形になって売上横ばいという風に見ることができます。
このような状況の中で、ポイントとなってくるのは「客数」と言えるでしょう。
実際に私がセールスの現場で各社様から伺う課題も、業界を問わずこの認識は一致していて、特に将来の主要顧客となり得る若年ファミリー層を取り込みながら客数をアップしていきたいという課題をお持ちです。
そこで、アプリで顧客とのエンゲージメントを高めるお手伝いをしている我々メグリとして、顧客体験向上につながるヒントを皆様と一緒に見つけていきたいということで、今回行った調査は「ホームセンターに月1回以上来店する人にその来店目的や意識を聞いたアンケート調査」です。
これからご覧いただくのは、寄せられた回答を20-30代、40-50代、60-70代という3世代に分けた世代間分析などを合わせて行った結果をご報告します。
このレポートの世代分析はこのウェビナーでお伝えしていますが、アンケート全体の結果はホームページからダウンロードしていただくことができますので、ご興味お持ちいただければダウンロードもしていただければと思っております。

ホームセンターの利用目的

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初めにご紹介するのは「あなたがよく行くホームセンターの利用目的で最も当てはまるものを教えてください」という質問です。非常に多くの商品を取り扱うホームセンターですが、生活必需品、ペット商品、キャンプ用品など日常を豊かにする商品、プロ向け商品など、最も購入する目的として当てはまるものを1つ選んでいただきました。
結果として、「生活必需品を購入するため」とした人が50.7%と約半数でした。
これを年代別に見ると、生活用品と回答しているのは年齢層が上がるほど高くなっているという点が注目されます。分析としては浅いかもしれませんが、趣味に使う時間や余裕が年齢が上がるにつれて増えていくことを考えれば、一定納得性のある結果と言えるでしょう。

事前の商品決定について

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続いて「あなたがよくホームセンターを利用する際、購入したいものを来店前から決めていますか」という質問をしました。目的購入なのか、お店で色々探して決める場合が多いのかという質問です。
結果は「買いたいものをある程度決めているけれども店内で実際に物を見て買う」という人が49.2%、「すでに買うものを銘柄まで決めて来店してそれを購入する場合が多い」とした人が44.7%でした。
これを年代別に見ると、かなりはっきりと年代的な差が出ました。年齢の若い世代ほど目的買いの傾向が見て取れます。このまま解釈すると、若年層には来店前から適切な情報提供をしていくことが必要で、シニア層の方に関しては店内での訴求方法を工夫する、という方向性が考えられます。

日用消耗品の購入先

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「あなたが日用消耗品を購入する店舗として最もよく利用しているお店を教えてください」という質問もしました。
日用消耗品は業態間で最も競争が激しいと考えられます。例えば、ホームセンターならペット用品買うついで、キャンプ用品買うついで、スーパーマーケットなら生鮮食材を買うついで、ドラッグストアなら化粧品を買ったついでやお薬をもらったついでに、もう1品買ってもらいたいという要素だと思います。
この調査自体が月に1回以上ホームセンターを利用している人に聞いたアンケートなので若干バイアスがかかっていると思いますが、結果は「ドラッグストア」が43.9%と半数弱を占め、次いで「ホームセンター」「スーパーマーケット」という順でした。ドラッグストアの立地の良さ、コンパクトな店舗形態、生活動線上に多くあることから、日用品の購入先としては非常に優位性が高いことがわかります。
これを世代別に見ると、20-30代ではホームセンターでの日用品購入が1番多いという結果になり、40代以上とははっきり違う結果になりました。ホームセンターに月1回以上行く人へのアンケートなのでサンプルにバイアスがかかっているものの、世代間でくっきり差が出ているのは注目すべき点です。

購入する店舗への期待

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「購入する店舗に対してどのような期待をしているか」という質問では、全体結果として「品揃え」と「価格」が上位でした。世代別に見ると、上位2項目については40代以上は「品揃え」を重視する傾向がある一方、20-30代は「価格」の方に注目が集まっています。ただし、20-30代は「クーポンやポイント」についてはあまり表が集まっていないのが興味深いです。また、「自宅から近い」という回答が40代以上と比べて著しく低い傾向も見られました。単純に考えると、クーポンやポイントという還元方法よりも、価格として分かりやすく安いということが訴求できれば、多少遠くても車などを使って足を運んでもらえる可能性が見えてきます。購入する店舗別の分析では、スーパーマーケットは「買い慣れたお店」「家から近い」という回答が多く、食材などを買うついでに手に持てる範囲で持ち帰るというイメージが浮かびます。ドラッグストアは「クーポンを使った安さ」が定着しているようです。ホームセンターについては「豊富な品揃え」「大容量パック」などのまとめ買いニーズに注目が集まっています。また、テレビ番組の影響もあるのか、オリジナルの生活アイデアグッズなどのPB商品に対する印象も一定根付いているようです。

店舗に対する不満や要望

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「あなたがよく行くホームセンターの実際の店舗に対する不満や要望があれば教えてください」という質問では、全体として「特にない」という回答が最も多かったのですが、世代別に見ると20-30代は「特にない」と答えている割合が非常に小さいということがわかりました。40代以上と比較して多くの項目で不満を感じている傾向があります。

世代間の違いが目立つところとしては「店舗の品揃え」「スタッフへの声がけがしにくい」「会員制度にお得がない」「商品情報が少ない」「レジ待ちが長い」などが挙げられます。若年世代では店舗の支持を得ていくための店作りにはまだまだ工夫の余地が多いと言えるでしょう。
「あなたは新聞折り込みチラシに記載の商品を購入することを目的にホームセンターに来店しますか」という質問では、「そうだ」という層が「あまりそうではない」「全くそうではない」を上回る結果となりました。
意外だったのは、若い世代の方がチラシに対してポジティブだったという結果です。別に行ったスーパーマーケットとドラッグストア向けの調査でも、「チラシを見る場合、どこで見ますか」という質問に対して「アプリで見る」と回答した人が「紙で見る」と回答した人よりもずっと多いという結果でした。今回の調査でも、チラシをアプリで見ているという人が含まれているかもしれません。
「あなたがよく行くホームセンターは自社のネットショップを運営していますか」という質問では、全体として最も多かった回答が「運営していることを知らない」でした。
これを世代別に見ると、「ネットショップをよく利用している」「利用したことがある」と回答した方の大半が20-30代でした。
特に20-30代では「運営していてよく利用している」と回答した方が34.1%(1/3以上)にのぼります。一方、40-50代、60-70代では「運営していることを知らない」という回答が多く、60-70代では半数に達しています。
高齢者の方は、使う・使わない以前にネットショッピングへの関心そのものが低いと言わざるを得ないかもしれません。
ネットショップについては20-30代の支持を得るため、また店舗への不満も大きいことを考えると、ネットショップと店舗の役割をうまく連動させながら、ネットショップの強みを生かして店舗の不満を補填していけるような顧客体験設計が求められているように感じます。
参考までに、ホームセンターが運営しているネットショップに関する不満については、20-30代の利用者に絞ると「送料が高い」が最も多く、次いで「商品の探しにくさ」「取り扱い商品の点数の少なさ」などが挙げられました。これらの不満を解消しつつ、店舗との役割をうまく組み合わせていくことに活路があると感じられます。

まとめ

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短いお時間でしたが、内容としては以上となります。Q&Aでいただいた「若年層の定義」についてですが、今回は20代から70代の方に向けて均等割付けで調査を行い、20代・30代・40代・50代・60代・70代という形でヤング・ミドル・シニアの切り口で分析しました。基本的には若年層と私が申しているのは20-30代の方を意識した形での調査とご理解いただければと思います。

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