機能はシンプル デザインは洗練 ブランド愛が詰まったTHREEのアプリ

株式会社ACROが運営するビューティーブランド「THREE」。天然の植物由来の原料や国産原料にこだわったスキンケア製品と、自身の美しさを引きだすメイクアップを発信し、感度の高い女性に人気のブランドです。
ランチェスターは、モバイルアプリプラットフォームのEAPの機能を活用し、THREEのアプリを開発しました。
THREEの世界観が表現されていて、洗練された写真が並んだトップ画面は、見るだけで気持ちが華やぐよう。進行も、ランチェスターとACROの担当者との連携がうまくいき、スムーズに進みました。
実は、「最初はアプリを作るつもりではなかった」とACROのプロジェクトマネージャーは話します。一体どういうことなのでしょうか。
アプリ開発に関わったメンバーである、ACROのプロジェクトマネージャー・横山 智之さん、デジタルコミュニケーションチームマネージャー・岩﨑 愛さん、デザイナー・早川 美央さん、ランチェスター代表取締役・田代 健太郎、営業担当・高田 克巳、エンジニア・金子 将範の6名が語ります。

シンプルな機能になった理由

田代 今回のアプリは、2つのローンチに分かれていましたね。

横山さん はい、1回目のローンチ(2019年10月)では、THREEのオリジナル記事やニュース、Instagramなど、コンテンツが点在していたのをアプリに集約させました。それから、店舗と公式オンラインショップのお客様情報が統合されたので、アプリで会員証を出せるようにしました。2回目のローンチ(2020年3月)では、THREEの大切なお客様のために、バースデーギフトやスペシャルチケットなどの特典を用意しました。

岩崎さん THREEは、クリエイティブだけでなく、お客様とのコミュニケーションもとても大切にしているブランドなんです。今回のアプリでは、デザインもコンテンツも、THREEらしいものになりました。THREEのブランドのコンセプトである、WISDOM(知性)・INTUITION(感性)・BALANCE(バランス)が表現できていますし、お客様に使っていただけるアプリになったと思います。

ACROプロジェクトマネージャーの横山 智之さん

横山さん 今回のアプリでは、機能はあまり盛り込まず、シンプルにしました。

田代 機能をシンプルにするってなかなか難しいんです。THREEのアプリはアプリがどういう役割を担い、お客様にどんな体験を与えるものなのか、目的が明確になっていると思います。なぜそれが実現できたのでしょうか?

岩崎さん 最初からアプリを作ろうとしたわけではないんですよね。

横山さん そうなんです。最初にやりたいことを全部出して、精査していった段階で、「アプリでやるのがベストなんじゃないか」という話がようやく出てきました。

岩崎さん THREEがお客様のライフスタイルの一部になるためにはどうしたらいいか考えた時に、アプリがひとつの手段だった、という感じです。

田代 なるほど、それは素晴らしい。

横山さん アプリを作るとなると、我々もやりたいことがたくさんあったんです。でも、「これを使うのは誰だ?」と改めて考えると、お客様と店頭の販売員だと。お客様に使いにくいと思われて、アンインストールされたら意味がない。店頭が混乱するのもいけないし、使いにくいアプリだと自信を持ってお客様に会員登録を勧められません。

早川さん だからまずは、可能な限りシンプルにしようという話になったんですよね。

横山さん はい、まずは最低限の機能を搭載して、その後に必要なことがあれば実現していくことにしました。

田代 これは、お客様としっかりコミュニケーションを取られている企業らしい考え方ですね。

POINT
  • アプリを作ろうとして始めたのではなく、顧客のことを考えた結果、アプリという手段を使った
  • ユーザーのことを第一に考え、機能はシンプルにした

THREEに学ぶ、ローンチまでのプロセス

高田 最初に訪問した際には、もう機能の大枠は決まっていました。

田代 そうでしたね。既に他の企業の話も聞かれてて、コンサルの方もいて、システムを見ている方もいて、アプリのプラットフォームがどういうものかというのも理解されていました。だから、僕らが訪問した時には、いくつかご質問をいただいた程度。やりたいこととやれることが合致していたので、すぐに決まりましたね。

高田 そういう企業は実は珍しいんですよ。アプリは作りたいけれど、アプリの目的やコンセプトが決まっていないケースが比較的多いんです。

田代 ただ、アプリはブランドの顔であり、お客様との大事な接点になるので、お客様を第一に考え、「手段としてアプリを使う」というACROさんのような考え方が一般的になってくれればいいなとは思いますね。

高田 そうじゃないと、「今どきの会員証はアプリだから」「皆アプリをやっているからやる」という発想に陥ってしまい、目的と手段が逆になってしまう。そうなると、意思決定までの時間もかかるし、プロジェクト自体も右往左往しがちです。ランチェスターはアプリの開発会社なので、アプリに何を載せてどう出していくかのアドバイスはできます。でも、その中身を作っていくのは企業なんですよね。お客様に届けたいもの、見てほしいもの、見せたいものがしっかりしていないと、中身がバラバラで目的がぶれたアプリになってしまいます。

田代 ACROさんは、社内でコミュニケーションができていて、お客様に何を届けたいかのコンセンサスも取れていると感じました。なぜそういう環境が作れているのですか?

岩崎さん 今回のアプリに関して言うと、理由は2つあると思っています。1つ目は、「お客様のためになることを提供する」という軸が決まっていました。そこからブレなかったので、途中で躓くことなく進められたのだと思います。もう1つは、「ブランドからお客様への提供するべき価値」について相互理解があったからだと思います。ブランドとしてどういう立ち位置で、お客様に対して何をしていくべきか、社内でしっかり共有されているからかと。

早川さん THREEはクリエイティブディレクターがいるディレクターブランドなんです。ディレクターが提供したい世界観が、社内にきちんと落とし込まれているのだと思います。

岩崎さん ブランド愛が強い方が多いんですよ。「ブランドとしてどうあるべきか」という軸がしっかりしているので、今回も議論や密なコミュニケーションが早い段階でできたんだと思います。

高田 そういった企業は、開発がスピーディーに進みますし、結果的にいいアプリができますよね。

POINT
  • 顧客に対する姿勢やブランドとしての世界観が社内でコンセンサスが取れていた
  • アプリの役割と目的が明確だとプロジェクトがスムーズに進む。

初めて使われたピクチャーカード

田代 今回のアプリでは、ピクチャーカードという機能を使っています。写真や画像に合わせて、文字の色や配置を管理画面から設定できる機能です。

ピクチャーカード

高田 ホームページやInstagramで綺麗な写真を載せているTHREEさんにぴったりの機能だったので、ぜひ見ていただきたかったんです。

横山さん 最初の商談のときに、もうデモを作ってきてくださいましたね。

高田 実際に見ていただいたら、絶対にうちのEAPがいいと分かっていただけると思いました。

早川さん THREEはクリエイティブも大切にしているブランドなので、ピクチャーカードを活用し、世界観を生かした表現ができることも大きかったです。

田代 ピクチャーカードって、実は運用がとても大変なんです。本当はもっと色んな企業に使っていただきたいんですけど、未だにTHREEにしか使われていません(笑)。

早川さん えーっ、そうなんですか!

高田 白と黒の文字が映えるような、美しい画像や写真を出し続けるのが難しいんだと思います。THREEの場合、もともとクオリティの高いものを出し続けていて、そこにEAPのピクチャーカードフィットしたんだと思います。

早川さん ピクチャーカードって、デザイン側からするととっても便利な機能ですよ。背景と組み合わせて、あえて違和感を出すこともできる。

ACROデジタルコミュニケーションチームマネージャーの岩崎 愛さん、デザイナーの早川 美央さん

岩崎さん 今って、毎日たくさんのアプリがリリースされているじゃないですか。その中で、頻繁に開かれるアプリはごく一部ですよね。

金子 リリースすることが目的ではなくて、使ってもらえる、見てもらえるアプリを出すことが大事です。

岩崎さん はい、そう考えたときに、THREEの魅力、クリエイティブの美しさを出せる機能がピクチャーカードだったのだと思います。アプリが増えているなかで、洗練されたコンテンツを出していかなければいけない時代のニーズに合った機能だと思います。

POINT
  • 使ってもらえる、見てもらえるアプリにするためにはいいコンテンツを出し続けることが大切
  • クリエイティブに重きを置いているTHREEにとってピクチャーカードはぴったりの機能だった

アプリ開発には「ブランド愛」が大切

横山さん 今回のプロジェクトはスムーズに進んだと仰っていただいていますが、色々と要望を伝えさせていただいたので、ご迷惑をお掛けしたんじゃないかと……。

高田 そんなことないですよ。コンセプトを話す方、デザインにこだわる方、システム側の方々など、皆さん役割がはっきりしていたので、進めやすかったです。

横山さん 金子さんはいつもすぐにご対応いただきました。

金子 やっぱり、早く答えがほしいときもあると思うので、可能な限りすぐ返事をするよう努力していました。例えば、微調整の段階になるとやってみないと分からない部分もありますし、「できません」と言わずに早くフィードバックしていましたね。

横山さん 苦労したところってありますか。

金子 バックエンドのシステムは社内のメンバーに助けてもらったり、ベンダーさんやECの各担当者とやり取りをして、上手く調整しながら進められたと思います。……うーん、苦労というほどではなかったかな(笑)。

早川さん 私も金子さんと同じで、今回のプロジェクトで特に大変なことは思い当たらなくて。私自身がTHREEのファンなんですけど、「THREEらしさ」の枠の中で自由にデザインさせていただけたと思います。

岩崎さん 分かります。私は入社して2年目なんですけど、2009年にブランドができてからずっとファンで。THREEが提案する価値観を、ひとりでも多くのお客様に伝えたいという思いで、開発に携わりました。

田代 その思いは僕たちにも伝わってましたよ。アプリの開発は僕らに任せて頂きたいので、ブランド側はコンテンツなどのクリエイティブにこだわってもらいたいといつも思っています。THREEのように、デジタルのトレンドに囚われることなく、アプリを通してお客様の体験をどう向上させていくか、考えられる企業が増えてほしいですね。

POINT
  • 要望に対し、できるだけ早くフィードバックするようにしていた
  • ブランド愛がある会社は、お客様ファーストのいいアプリができる

左から、ランチェスター代表田代健太郎、ACROプロジェクトマネージャー横山智之さん、デジタルコミュニケーションチームマネージャー岩崎 愛さん、デザイナー早川 美央さん、ランチェスターエンジニア金子将範、営業担当高田克巳