店頭のサービスをデジタルで再現したい

――アプリのリニューアルを行った経緯と、アプリにおけるブランドの課題を教えていただけますか。

谷さん リニューアルのきっかけは、それまでのアプリが会員証の機能くらいしか使われていなかったからです。もっとお客様に活用いただけるアプリにしたい活用していこうという話になり、リニューアルを行いました。

リニューアル前のアプリはフルスクラッチ型で作っていましたが、それだと、機能の追加やデザインの変更に時間がかかってしまいます。また、これからは分析をしっかり行ってPDCAを回していきたいと考えていました。それで、必要な機能が揃っているプラットフォーム型のサービスを探していたんです。

下谷 ブランドの魅力をアプリでもっと表現したいという思いもありましたよね。

谷さん そうですね。当社の商品は、ただの下着ではなく、お客様の体に合った形、合ったサイズのものを正しく着けることで身体が美しく変化していく。その感動を届けるのがブランドの使命です。ですからアプリも、お客様それぞれの悩みに応じたコンテンツを提供し、店舗に行けなくても変化を実感いただけたり、「店舗へボディチェックに行かなきゃ」といった、モチベーションをあげたりするような内容が必要でした。

田村さん 少し付け加えますと、当社の接客やサービスは、お客さまとスタッフが向き合って作り上げていきます。しかしそれが、このコロナ禍で対面でのサービスができない。そこで、店頭と同様のサービスをオンラインでも提供できないかという思いから、アプリにはこうした課題を解決するひとつのツールとして期待しました。

谷さん コロナ禍以前より、オンラインでご購入いただくお客様の場合は、オンライン上の情報だけで「私に必要な商品はこれかな」と、なんとなく買っていただいていました。オンライン上でも、商品を買う前に、お客様の悩みに応じた情報を提供したかったのです。

お客様の悩みはその段階によって違いますので、メンバーシップのプログラムを新しくし、ブロンズからプラチナまでの4段階のレベルを設定しました。新たなアプリではこのランク別で情報配信を行えるので、ブロンズ会員へは下着の正しい付け方などの基本的な内容を配信し、バストが綺麗に仕上がっている上位ランクの方には、さらに美を深めるコンテンツや、新作のお知らせなどを配信するようにしています。

対談の様子

下谷 アプリをリニューアルするにあたり、注力したのはどのような点ですか。

谷さん 大きく3つありました。ひとつがこれまで全員に同じ内容が配信されていたものを、4段階のメンバーシップ制にしたことで、セグメント配信を行えるようにしました。

2つめが、アプリからオンラインでお買い物していただくときに、アプリとオンラインサイトの2度ログインが必要だったのですが、アプリでログインすればそのままスムーズな買い物ができる自動ログイン(※)の機能を入れてもらっています。

最後が、分析の機能です。これまでグーグルアナリティクスに頼っていたものを、MGReのダッシュボードを使うことで誰が見ても分析結果が理解できるようにしました。

売り上げ面はグーグルアナリティクスがあれば確認できますが、ニュースお気に入り店舗など、アプリにいろいろメニューを設定しているので、どこを見られている方が多いとか、やっぱりアプリ側の管理画面で見えるほうが、日々運用していく上で必要だなと思いまして。



それから、店舗のフォロー機能ができたので、お気に入りの店舗を登録すれば、そのお店の情報を届けることができるようになりました。これまでは一斉配信しかできず、関東の方に関西の店舗のお知らせが届くこともありました。お気に入り店舗からの配信だけが届くので、より情報を見てもらえるようになります

私たちの仕事はお客様とその担当スタッフとの深い関係でつくられるものですから、自分の担当スタッフが異動になると、お客様もお気に入り店舗を変えることが多いんです。

そうなった時に、例えば担当スタッフのいる店舗と、自分が通いやすい店舗の2つをお気に入り登録できますよね。そういった面でも、複数の店舗をフォローできる機能は導入してよかったなと思います。

※自動ログイン……アプリからECサイトへ自動ログインする仕組み。ID/PASSの再入力が必要なく、ユーザーの手間を省き、シームレスな体験を提供。

下谷 担当スタッフが異動になるとお客さんも動くって、美容師さんみたいですよね。

市原 分析機能はどういう風に活用されていますか?

田村さん 以前は、コンテンツを週2回アップしても、どのコンテンツが良かったのかといったことがほとんどわかりませんでした。しかし、MGReのダッシュボードではどのコンテンツがどのくらい閲覧されたのかがわかります。どの情報の反応が良かったか、どれくらいのリアクションがあったのか、そういった分析結果をもとにPDCAを回し、事業の改善を目指しています。

また、先ほどの店舗フォロー数がどのぐらいかなど、店舗別のデータを全社共有しています。すると、営業サイドや店舗スタッフが、「他の店には負けたくない」ということでモチベーションが上がります。さらに、対立しがちなリアル店舗とオンライン店舗の関係も、リアル店舗のスタッフの頑張りがオンラインの売り上げに貢献しているとデータでわかるので、お互いに協力し合えるようになってきました。

MGReは隔週に一回、機能のアップデートがある

谷さん 逆にお聞きしたいのですが、メグリさんが今回のアプリで注力されたところはどこですか。

下谷 自動ログインは入れてよかったと思います。その他にも、ピクチャーカードという機能が御社には、かなりマッチしたのではないかと思っています。ピクチャーカードは、画像を全面に押しだしたニュース機能のレイアウトなんですが、御社はすごくきれいな画像を使われているコンテンツが多いので、見ただけで買いたくなってしまいますよね。

谷さん 市原さんはどうですか。

市原 ブラデリスニューヨーク様は、個人的に強く印象に残る企業なんです。というのも、アプリだけではなく、このタイミングでECも、CRM(顧客管理システム)も同時にリニューアルしましたから。単純にアプリを導入しただけではなく、OMOを行う土台をつくれたことは私にとっても非常に良い経験になりました。

谷さん 市原さんには、いろいろと提案していただきました。当社にはSEもいませんし、マーケティングもシステム面をメインで見る部署は無かったので、わからないことだらけだったのです。だからいつもアドバイスをいただき、一緒に考えていただいたことでうまくいったのだと思っています。

さらにいえば、MGReのスタンダードプラン※を選んだこともよかったです。工数もコストも想定よりかなり抑えられました。それで、いろいろな会社からも、「半年でアプリ・EC・顧客管理システム全部入れ替えるって凄いね」って言われます。大体1年半くらいかけて導入するところを半年でできましたから。これまでのようにフルスクラッチ型だったら無理でしたね。

下谷 メグリをパートナーに選んでくださった一番の理由はなんでしょうか。

谷さん 我々が目指すところがショッピングアプリじゃないというところと、開発の時の市原さん、現在の下谷さんもそうですが、サポート体制がすごくしっかりしていて、相談にも気軽に乗ってくださるところです。

実は、アプリのリニューアルについて数社からの提案を頂いていましたが、その多くが「何をやりたいですか」「売り上げの向上にはどうしますか」と、アプリのことがよくわからない中で「何をしたいか」と質問され、想像しながら回答して、という状況でした。そのなかで、メグリさんは私たちのブランドを大事にしてくださり、深く理解しようとする姿勢がありました。それが信頼につながったのだと思います。

下谷 MGReの機能面はいかがですか。

谷さん やりたいことは、ほぼほぼできています。導入してから特に思っているのが、機能のアップデートのスピードがとても速いですね。

下谷 細かい改修も含めてですが隔週に一回リリースしようと考えていますね。大きい機能でも短期間でアップデートしていると思います。

谷さん 「こうできないですか?」とか「こういう機能が欲しいです」っていうのをちゃんとヒアリングしてくださるので。それが実際に機能としてアップデートしていただけることもあって導入している側からするとありがたいですね。

市原 我々のスタンスが、例えばブラデリス様から言われたことを改修することで、マルチテナント型ですから全クライアントがそのメリットを享受できるわけです。

※MGReには3つのプランがあり、CRMやECプラットフォームなど他との自由な連携ができるエンタープライズプラン、アプリに提携のサービスが連携されるスタンダードプラン、最短1か月で自社アプリが持てるエントリープランがある。

1年弱でアプリのダウンロード数が4倍に

――このアプリの導入後はどんな効果がありましたか。

谷さん ダウンロード数は、はるかに予想を上回り、ローンチ後2ヶ月で旧アプリのダウンロード数を突破して、2021年7月時点で4倍になっています。10ヶ月間で旧アプリの4倍ということですね。

さらに、ローンチして1週目、2週目には、Appleのショッピング部門のダウンロードランキングで上位に入り、下着ブランドの中でトップだった時もありました。そして、アプリ経由のEC比率が平均30%くらいまで伸びました。あとは、全会員数のダウンロード比率もよく、総会員数の5割弱の方にアプリを入れていただいています。

市原 CRMをリニューアルしたことの変化はいかがでしたか。

田村さん ECと店舗の会員情報が統合されたことで、今まではオンラインで購入されたお客様が店舗に来られても情報がない状態でしたが、情報が共通化したことでお客様の行動をすべてのスタッフが把握できるようになりました。当然、この情報は接客やアフターフォローに活かされ、サービスの質の向上につながっています。これはリピーター、ロイヤリティの高いお客様向けのアプリ以外にも生かされています。

下谷 ブラデリスニューヨーク様はLINE公式アカウントの運用やECモールでの展開もされていますが、アプリとはどう差別化されていくのでしょうか。

谷さん LINE公式アカウントやECモールは、主に新規のお客様をターゲットにしています。そこから、もっとサービスが充実しているオフィシャルサイトや店舗のお客様になっていただくのが理想です。アプリはリピーター様向けのコンテンツを充実させています。

一人ひとりのお客様に合ったサービスができるアプリを目指す

――アプリのさらなる活用のためにどんな施策を行っていますか。また、今後の展望もお聞かせください。

谷さん 施策としては、プッシュ配信とお気に入り店舗のフォロー機能でセグメント配信を続けることでしょうか。ニュース配信でもセグメントをかけて行っていますし、8月以降で、スタッフブログやお客様に合わせたクーポンの導入も考えています。

下谷 今後リリース予定のクーポン系の機能を試していただきたいですね。田村さんの今後の展望についてはいかがですか。

田村さん 繰り返しになりますが、我々がやっているのはオリジナリティの高いサービスなので、お客様が今どういう状態にあるのかということをご自身で見られ、毎日チェックできるようなアプリにしていきたいと考えています。一方で、我々も、お客様の状態に合わせた最適なサービスがアプリを通じて提供できるようになれば理想的です。

谷さん 私は、より多くのお客様に体の変化を感じていただきたいと思っています。頑張ると一言でいっても「どれくらい頑張ればよいのか」ということはなかなかわからないものです。アプリでは、その「どれくらい頑張ればよいのか」といったことがわかり、後押しするアプリにしたいと考えています。そして最後には、お客様にブラデリスを使って良かったなって思ってもらいたいです。

下谷 そうですね。頑張ればこうなるの「頑張る」の具体的な内容をどうコンテンツ化するかが大切ですよね。

初めて補整ブラを付ける方を例にするならば、どれくらいの期間頑張れば結果が出るのか、など。。ゴールが無いと、ずっと走り続けるようなものですから途中で心が折れてしまいますよね。例えば、「こういうお客様には、1年間この下着を、これくらいの頻度で着けていくと、こんなシルエットなりました」というような事例があると、モチベーションになるかもしれません。そういうコンテンツ作りに関してもCSが支援しますし、理想のアプリになるよう、適切な手段を随時ご提案させていただきます。

市原 今皆さんがお話しされた理想を実現する場合、アプリよりもWEBで構築されたほうが、費用が抑えられ、簡単にできるというケースもあります。
MGReでできること、アプリ以外で実現できること、またアプリとの連携についてなど、全方位的に支援させていただきます。我々のミッションはアプリを提供することではなく、アプリを通じてよりよい顧客体験を提供することなので。

谷さん 意外と実現できそうなのを聞いて、ますます楽しみになりました。