モバイルアプリの分析は、ユーザーがアプリをどのように使用しているかを詳しく把握できるため、アプリそのものの改善だけでなく、マーケティング施策の最適化にも役立ちます。
しかし、ARPUをはじめとするアプリ特有のKPIの知識やデータ可視化なども求められるため、どのようにアプリ分析を進めればよいか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、モバイルアプリの分析から施策実行までを3ステップで解説します。分析項目の概要も解説しているため、基本的な内容から理解していきたい方はぜひご覧ください。
Contents
モバイルアプリにおける分析とは
モバイルアプリにおける分析とは、アプリの利用状況を計測し、ユーザーの行動や傾向などを可視化することを指します。具体的には「ユーザーの離脱ポイントを可視化し、コンバージョンの障害となっている箇所を特定する」「利用頻度の低い機能を特定し、機能の必要性・訴求方法などを再検討する」などを通じてアプリの課題を把握し、改善に活かすことが可能です。
アプリの分析をはじめる前に知っておきたい基本ステップ
アプリの分析を始める前に、以下3つの基本ステップを理解しておきましょう。
1. 売上向上のためのKPI分析
アプリの分析は、売上向上を測ることができる主要KPIの確認から始めていきましょう。
月間売上を構成するのは、MAU(月間アクティブユーザー数)とARPU(ユーザー1人あたりの平均売上額)の2つです。しかし、そもそもMAUが少なければ売上につながらないため、ユーザー関連の指標であるNUU(新規ユーザー数)・EUU(既存ユーザー数)・RT(継続率)の3つの指標も重要となります。
たとえば、NUU(新規ユーザー数)が低い場合は新規ユーザーを獲得する必要があり、EUU(既存ユーザー数)のRT(継続率)が悪い場合は継続率を改善する施策を打つ必要があります。また、MAU(月間アクティブユーザー数)が高いにも関わらずARPU(ユーザー1人あたりの平均売上額)が目標値に届いていなければ、購入額や購入回数などに関する施策が求められるでしょう。
そのため、まずはMAU・ARPU・NUU・EUU・RTの主要KPIを確認し、自社アプリの問題点を洗い出しましょう。
2. KPI向上のためのユーザー・コンテンツ分析
ステップ1で現在の問題点を把握したら、その問題点をユーザーの性別・年齢などの情報や、コンテンツのPV・CVRなどの情報から分析しましょう。 たとえば、RTが低いとMAUを稼げない最大の原因となります。RTが低い原因を「アプリのホーム画面ですぐに離脱しているのではないか」「獲得しているユーザー層が間違っているのではないか」といったように分析したうえで、改善施策を考える必要があります。 また、アプリ内で配信しているコンテンツのPV数が足りていない場合、コンテンツの内容がターゲットに合っていない可能性があります。購入数が足りず売上につながっていない場合、訴求軸が間違っている可能性もあるため、ユーザーやコンテンツの分析を通じて問題を掘り下げましょう。
3. 分析結果から施策実行
ステップ2で問題点を分析したら、アプリの問題点の解決につながる施策を実行しましょう。 たとえばRTが低く、ユーザーが会員登録したあとにすぐに離脱してしまっている場合、リーチしているユーザー層やアプリそのものが適切ではない可能性があります。このケースでは「アプリの画面設計を見直す」といった施策を実行すれば、RTが改善し、MAUが増えて月間売上向上につながります。 このようにアプリを分析する際は、主要KPIの分析から始め、原因を掘り下げるためにユーザーやコンテンツを分析し、分析結果に基づいて施策を実行する流れが基本ステップとなります。
アプリ分析における主要KPI
ステップ1で、問題点の洗い出しに活用した主要KPIは以下の5つです。自社アプリの現状を以下KPIに当てはめることで、どの部分に問題があるかを特定できます。
各KPIの概要と他KPIとの関係性を解説します。
MAU
MAU(Monthly Active User)は、1か月間にアプリを少なくとも1回利用したユーザーの数を指します。 月間アクティブユーザーとも呼ばれ、アプリの人気を測る指標としても用いられます。 MAUは、ARPUと並んでアプリにおける月間売上に直結するKPIであり、NUUとEUUの2つから構成されています。
NUU
NUU(New Unique User)は、新規ユニークユーザー数を指します。一定の期間内に初めてアプリを利用したユーザーの数を示し、アプリの新規ユーザー獲得状況を把握する際に役立ちます。EUUと並んで、MAUを構成するKPIとなっています。
EUU
EUU(Existing Unique User)は、既存ユニークユーザー数を指します。 過去にアプリを利用したことがあるユーザーのうち、特定の期間内に再びアプリを利用したユーザーの数を示し、継続ユーザー(RT)と、復活ユーザー(CB)の2種類のユーザーで構成されています。NUUと並んで、MAUを構成するKPIです。
RT(リテンション)
RT(リテンション)とは、ユーザーが継続してアプリを利用する割合を示す指標で、その割合を示した数値をRT率と呼びます。RT率が高いほど、ユーザーの定着率が高いことを意味し、アプリの価値・魅力が高いことを示します。なお、前期間ではアプリを開かなかったものの再びアプリを起動した場合は、復活を意味するCB(カムバック)と呼びます。RTは、CBと並んでEUUを構成しています。
ARPU
ARPU(Average Revenue Per User)は、アクティブユーザー1人あたりの平均売上額を指します。「売上÷アクティブユーザー数」で算出でき、アプリの収益性を評価する指標として用いられます。 たとえば、月間売上が200万円・月間アクティブユーザー数が2000ユーザーの場合、AEPUは1,000円となります。ARPUは、購入額や購入回数、購入頻度などによって構成されています。
KPI向上のためのユーザー・コンテンツ分析
ユーザー分析
ユーザー分析では以下のような項目を確認することで、アプリユーザーの行動パターンを深く理解することができます。
– ユーザー属性(ユーザーの性別・年齢・使用OSなど)
– プッシュ通知を許可しているユーザーの割合
– 位置情報を許可しているユーザーの割合
– アプリ継続利用期間
– 使用されている機能
– 使用されている時間帯
たとえば、ユーザー分析を通じてiOSを使用しているユーザーが大半を占めていることがわかった場合、iOSではプッシュ通知がデフォルトでオフになっていることから通知許可へのハードルは高いため、プッシュ通知を受け取りたくなるよう工夫した施策が求められます。
アプリプラットフォーム「[MGRe(メグリ)](https://mgre.jp/)」では、以下のようにユーザーの性別年齢分布、OSのシェア、iOS・Androidのバージョン、プッシュ通知・位置情報許可設定の内訳など、ユーザー分析に役立つ情報を簡単に確認できます。
上記のように、ユーザーに関する情報を収集して、なぜKPIが達成できていないのかを掘り下げたうえで、改善施策を検討しましょう。
コンテンツ分析
アプリ内の各コンテンツの閲覧状況や使用状況を把握することで、ユーザーの興味関心を分析し、コンテンツの改善や配信戦略に活かすことができます。コンテンツ分析では、以下のような配信コンテンツのPV数・CVRなどを確認しましょう。
– プッシュ通知
– クーポン
– ニュース
たとえば、会員情報をもとにクーポンをセグメント配信している場合、使用回数が少なければそのグループが使いたいと感じるクーポンを配信できていない可能性があります。 [MGRe(メグリ)](https://mgre.jp/)のランキングボードでは、以下のようにアプリ内のコンテンツごとに閲覧数・利用回数などを把握できます。
ランキングボードを用いて評価することで、クーポンの内容やセグメントなどを見直して施策の改善ににつなげることが可能です。
分析結果から施策実行
分析結果をもとに以下のような施策を実行していきましょう。
– アプリ内施策
– マーケティング施策
アプリ内施策
アプリ内施策では、アプリそのものを改善したりアプリ内で施策を実行したりします。 たとえばRTが低く、分析によりユーザーの年齢層が40代~50代が多いことが把握できた場合、継続して利用してもらうために「文字の表示サイズを大きくする」「コントラストを強くする」といった方法で、アプリをより使いやすく改善する必要があります。 また、ARPUが低くコンテンツが閲覧されていない場合、購入額や購入回数などを高められるようなコンテンツを配信する必要があるでしょう。このように、自社アプリの分析結果に応じてアプリ内の施策を打つことで、課題となっているKPIの改善につながります。
マーケティング施策
マーケティング施策では、アプリ内でなくASO・広告配信などのアプリ外の施策を実行します。 たとえば、NUUが低くそもそもユーザー数が少ない場合、ASOに注力する必要があります。ASOは日本語で「アプリ最適化」とも呼ばれ、App StoreやGoogle Playなどのアプリストアの検索結果において、上位に表示させる施策のことです。アプリの認知度を高められるため、ダウンロード数の増加が期待できます。
また、RTが低くアプリを改善しても離脱率が高かった場合、そもそもダウンロードしてもらうためにアプローチするユーザー層が適切でない可能性があるため、広告の訴求軸や配信ターゲットを見直すことで、ダウンロード後のRT向上が期待できます。 さらに、RT向上にはプッシュ通知も有効です。たとえば、ユーザー属性に基づいたセグメントを作成し、それぞれのセグメントに最適化されたプッシュ通知を配信することで、ユーザーのアプリへの関心を維持できます。
分析・施策実行が難しい場合はSDK組み込み
ここまで解説してきたとおり、アプリを分析して改善につなげるには、KPI分析からユーザー・コンテンツ分析、さらには分析結果に基づく施策実行までを行う必要があります。分析から施策実行までが難しい場合は、アプリに「SDK」を組み込むことで、分析から施策実行までを効率的に進めることができます。
SDKとは
SDK(Software Development Kit)とは、アプリを開発するために必要なツールをまとめたものです。具体的には、サンプルコードやプログラム、API、使用法の解説文書などが一式まとまっており、外部サービスの機能を追加するのに活用できます。
たとえば、直近1か月以内に1回以上購入した顧客にのみ、お得な情報をアプリのプッシュ通知で配信したいといった場合、SDKが用意されていない場合はユーザー情報の抽出から配信までをすべて手作業で行うか、システム連携の開発を個別で行う必要があります。 しかし、SDKを組み込める場合、CRMなどのシステムからアプリに直接プッシュ機能を配信できます。CRM内でアクションを完結できるため、開発コストを抑えられるうえ業務効率も高まります。
メグリのSDK組み込みによる分析・施策実行
SDKを組み込むと、アプリプラットフォームを利用しているほかのユーザーにも影響を及ぼすため、一般的なプラットフォームではSDKの組み込みは難しいとされています。しかしMGReでは、企業ごとに個別カスタマイズし、アプリ分析に役立つ以下のようなSDKの組み込みに対応しています。
モバイルアプリを分析できるマーケティングツール「AppsFlyer」では、アプリのインストールが計測できます。たとえば、出稿したアプリ広告から流入したユーザーがインストールしたかどうかを計測できるため、効果的な流入経路が把握でき、おもにNUU向上に役立ちます。 また「Adjust」では、アプリのインストールの計測や流入経路の分析が可能です。アプリ内課金や購買行動に至るまでのユーザー行動を分析することで、収益化を促進する施策を検討できるため、おもにARPU向上などに役立ちます。 さらに「Amplitude」は、アプリ内のユーザーの傾向を分析でき、ユーザー行動の傾向をもとに次のアクションに向けたヒントをAIが提案してくれます。分析から打つべき施策の選定まで任せられるため、アプリ内のユーザー体験向上に役立ち、おもにMAU・RT・ARPUなどの向上に役立ちます。 上記以外にも、SDKが用意されているサービスであれば、基本的にはMGReへの組み込みが可能です。SDKが用意されていなくても、システム連携の追加開発を行えるケースもあるため、MGRe (https://mgre.jp/)までお気軽にご相談ください。
まとめ
アプリ分析は、MAU・RTなどのKPI分析からユーザー・コンテンツまで分析したうえで、その結果に基づき施策を実行することで、売上向上やユーザー体験向上などにつなげられます。しかし、各種KPIへの理解から施策実行まで幅広い知識が求められるため、自社でのアプリ分析が難しく感じる場合は、アプリに組み込む「SDK」を活用する方法もあります。 本記事で紹介したアプリ分析の基本ステップやSDKを参考に、売上・ユーザー体験向上につなげてアプリ運用を成功させましょう。