顧客体験(CX)が注目されている今、多くの企業において顧客体験を高める動きが活発化してきています。
ただし、顧客体験は企業や商品のタイプ、顧客層によって理想とされる形が千差万別でもあります。自社の顧客体験を高めるためには、まずはさまざまな成功事例を参考にし、彼らの姿勢を学ぶことが大切です。
そこで本記事では、顧客体験を高めたい方への一助となるべく、国内外の成功事例を7つ紹介します。顧客体験を高めるポイントも解説しますので、参考にしてみてください。
<こんな方におすすめ>
- 顧客体験について理解したい方
- 顧客体験向上の成功事例を知りたい方
- 自社の顧客体験を向上するヒントを見つけたい方
顧客体験(CX)とは
顧客体験とは、顧客がある企業やブランドを認知し、商品購入を検討してから購入後に至るまでに得られる体験を指します。購入後のアフターフォローも含め、その企業と顧客のあらゆる接点は顧客体験の一部になります。
似た用語で「CS(Customer Satisfaction・カスタマーサティスファクション)」というものがありますが、これは顧客満足度という意味です。質の高い“CX”を提供した結果、“CS”が高まる、というイメージです。
顧客体験の概要とやり方、また「UX(ユーザー体験)」との違いなどについては、「顧客体験(CX)とは?向上するための5ステップとコツを解説」の記事で解説しています。顧客体験についての理解を深めたい方は参考にしてみてください。
顧客体験を向上させた事例
Netflix – DX×CXで、世界トップのストリーミングサービスに君臨
今や加入者が2億人を超える動画ストリーミングサービスであるNetflix(ネットフリックス)は、顧客体験を高めることで成功を収めた代表的な企業です。
1997年創業の同社は、元々はビデオレンタルからスタートした企業。当時は店舗でレンタルするのが当たり前だったDVDを、無店舗でオンラインにてレンタルできるサービスを提供したことで、来店する手間を無くし、顧客体験の質を上げたのです。
そこから、そのビデオレンタルサービスに高精度のレコメンド機能を付けたり、サブスクリプション、そしてVOD(ビデオオンデマンド)へとサービスのアップデートを重ね、今のサービス形態にまで進化しました。
店舗でのレンタルが一般的だったビデオレンタルを無店舗で行ったり、延滞金を収益源としていた当時のレンタル業界とは全く異なる方法での収益構造(サブスクリプション)にしたりと、とにかく革新的なサービス提供を開拓してきたNetflix。
2013年からはオリジナルコンテンツの提供も行うようになり、今ではコンテンツメーカーとしても確固たるポジションを築いています。
また、ユーザーが見たいコンテンツをシームレスに見られるようにデバイス間の継ぎ目を出来るだけ無くし、ストレスなくサービス利用ができるよう工夫されています。
まとめると、Netflixが顧客体験向上のために行ったことは以下になります。
- 最新のデジタル技術を常にフル活用し、顧客の負担を極限まで取り除く
- 業界の常識ではなく、顧客にとっての使いやすさを重視したサービス設計
- 好きなときに好きなデバイスで、自由にコンテンツ視聴ができる環境の提供
スターバックス – ターゲットの日常に溶け込む商品と空間でCX提供
1971年にシアトルの小さなコーヒーショップからスタートした最大手のカフェチェーン、Starbucks(スターバックス)。
日本では1995年から展開され、2021年12月末時点で全国1,704店舗を構える人気店です。
スターバックスは現在のカフェ運営のあり方を確立した先駆け的な存在でもありますが、【1. アメリカンコーヒーではなく、エスプレッソを軸にしたメニュー展開】、【2. カフェそのものが「くつろぎの空間」を演出する場所であること】、【3. テイクアウトコーヒーを提供すること】という3つのスタイルをベースとしています。
スターバックスが世界に浸透する以前、アメリカのコーヒーはまずいものだと言われていたそうです。アメリカンコーヒーは浅煎りで飲みやすい一方で、コーヒーの先進国であるヨーロッパでは深煎りでじっくり味わうものが多く、このギャップもありそのような評価になっていたのかもしれません。
そして、当時のアメリカでは、コーヒーはダイナーと呼ばれる食堂のような場所で飲むのが一般的でした。
一方、ヨーロッパにおいてカフェは“交流をする場所”と認識されており、家や職場以外に日常的に足を運ぶ「第3の場所」であったことから、スターバックスはこのコンセプトのもと店舗作りをするようになりました。
まとめると、スターバックスが質の高い顧客体験を提供し成功を収めた要因としては以下が挙げられます。
- コーヒーの先進国にならった深煎りコーヒーによる魅力的な商品の提供
- ターゲットが求める「気軽にコーヒーを飲みたい」需要に応え紙コップでの提供
- カフェという空間そのものを付加価値として提供
NIKE – 先進的な取り組みで、トレーニングやアイテム購入を質の高い体験に
スタンフォード大学の学生であったフィル・ナイトが、日本に訪れたことをきっかけとして1971年に立ち上げたシューズメーカーであるNIKE(ナイキ)は、言わずもがな全世界でトップを走る人気スポーツブランドと言えるでしょう。
NIKEは「Just Do It」というスローガンを掲げ、とにかく行動しようという意味合いのこの言葉の通り、常に先進的な取り組みを行っています。
プロのアスリートとのスポンサー契約を結びマーケティングを行う、今でいうインフルエンサーマーケティングの原型を1970~80年代に行い、陸上競技シューズ市場のシェア50%をすぐに獲得。
2006年にはApple社のiPodと連携して始まった活動量測定デバイスを開発し、トレーニング状況をiPod上に表示させる「NIKE+(ナイキプラス)」という当時は最先端ともいえるサービスの提供を開始しました。
2019年には、そのナイキプラスのコンセプトをベースに「NIKE Run Club」や「NIKE Training Club」の提供を開始し、「NIKE SNKRS(ナイキスニーカーズ)」という直販アプリもリリースされています。
当時は、Amazonの台頭によって小売ビジネスのベーシックが変わり業績が悪化した企業も増えていました。そんな中、直販アプリのナイキスニーカーズでは、新しい消費のあり方に上手く適応する形で店舗とECを繋ぎ合わせる取り組みを行っています。
これにより、転売や偽商品による被害を回避でき、ブランドやファンを守ることにも繋げられています。
まとめると、NIKEが良い顧客体験提供によりファンを離さない理由としては、以下のような取り組みが大きく影響しているでしょう。
- 常に先進的な商品開発と取り組みを行い、顧客に感動を提供し続ける
- いつでもどこでも、欲しいアイテムが手に入る直販アプリの提供
- 走行データの可視化により進捗を見ることで、トレーニングをより楽しいものにする体験提供
■参考:「DX経営図鑑」(DX Navigator編集部、金沢一央)
TikTok – 好きなものと掘り出しもの、どちらも見つけられる新感覚SNS
「セレンディピティ(Serendipity)」という言葉をご存じでしょうか。これは「偶然の産物、幸福な偶然」という意味を持つ言葉です。
なぜこのようなお話をするかというと、顧客体験をデザインする上で、顧客を飽きさせないこと、期待以上の価値を提供することは欠かせないためです。
例えば、あなたが知らない街を歩いていた時にフラッと立ち寄り、たまたま掘り出しものを見つけたお店が強く記憶に残った経験はないでしょうか?
あるいは、動画配信サイトをなんとなく眺めていて、レコメンドに出てきた動画をたまたまタップしてみたら意外に面白くてその配信者のチャンネル登録をしたことはありませんか?
「たまたま」掘り出しものを見つけられた、それが自分に新しい刺激や楽しみをくれた、その経験は強く記憶に残り、無意識にその場所への愛着がわくものです。
これを上手に応用しているのが動画に特化した、中国発のSNSであるTikTok(ティックトック)です。
一般的に、レコメンドによる広告やおすすめコンテンツの表示には、「趣味趣向に合わないものが出てこない」という弱みがあります。これは一見強みにしか見えないかもしれませんが、人は飽き性な生き物でもあります。
いつも見ているようなコンテンツしかおすすめに表示されないとなると、次第に変化が無くなりマンネリ化し、そのサービスを使う頻度は下がっていきます。
TikTokのレコメンドは、基本的にはユーザーの好みに合わせて選ばれた動画を表示するものの、あるとき突然、全く自分の好みとは関係ない動画が出てくる仕組みになっています。
顧客の好みに合わせるだけでなく、少しのサプライズや「ラッキー」と思われる体験を提供することも、人を相手にするビジネスにおいて求められることかもしれません。
TikTokが顧客体験を高めたポイントをまとめると、下記の通りです。
- それぞれのユーザーに合う「For You」フィードで好みに近い動画を表示
- たまに全く異なる動画を表示させることで、驚きというエンターテインメントをフィードに盛り込みセレンディピティを提供
- セレンディピティにより「新しい視点・アイディア」という顧客体験提供
Ticker – AR技術の活用により、オンラインで楽しく安心なメイクアップ体験を
韓国のビューティーテック企業、株式会社TACHYONB&Tが提供する「Ticker」は、バーチャルでメイクアップ体験ができるアプリです。
新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、化粧品を気軽に試せなくなった方は多いでしょう。企業側としても、なかなか積極的には店頭での化粧品テスターを勧めにくくなりました。
Tickerでは、そのような課題を高度なAR技術で解決する「バーチャルメイク」をアプリ上で提供しており、2021年のリリース以降、韓国ではビューティー部門においてGoogle Playチャート10週連続で1位になったことも。
競合のバーチャルメイクアップアプリとの違いは、【1】多重構造3Dマッピングにより、バーチャル上でもよりリアルなテスターができること、【2】メイクアップのカスタマイズで様々なパターンでのお試しができることだそうです。
また、顔の動きを捉えるトラッキング機能により、動画でも違和感なくメイクアップが維持されます。
実際に筆者も試してみましたが、リップは唇を動かしてもすぼめても、実際のメイクアップかのようにキープされ続け、アイライナーはメガネ越しでも正しい位置に引かれます。
アプリ上では、韓国コスメはもちろん、ディオールやイヴ・サンローラン、M・A・C、トムフォードなど名だたるメーカーの人気カラーを試すことができます。
まとめると、Tickerが顧客体験に貢献している点は以下になるでしょう。
- オフラインでのメイクアップ体験に不安のある顧客に寄り添ったサービス内容
- テクノロジーの力で、バーチャル上でもリアリティのある体験を提供
彼らはeコマースに関する特許も出願中とのこと。今後はメイクアップ体験をし、そのままその商品を購入する、という店舗でしかできなかった体験が当たり前になってくるのかもしれません。
気になる方は以下よりダウンロードできますので、バーチャルメイクを体験してみてはいかがでしょうか。
【アプリダウンロードページ】
Google Play/App Store
■参考:
・FASHIONSNAP「韓国発のアプリ「Ticker」とは?バーチャルメイクを提供」(https://www.fashionsnap.com/article/2022-03-06/beauty-ticker/)
・BeautyTech「韓国コスメのAIレコメンドアプリ、新登場の「ビューティチュ」、「Ticker」は日本上陸」(https://beautytech.jp/n/n3c184f4d979b)
バロックジャパンリミテッド – オンラインとオフラインの垣根を無くす買い物体験をデザイン
次に、アパレル企業の事例を紹介します。
MOUSSYやRODEO CROWNSなどのアパレルブランドで知られるバロックジャパンリミテッドは、デジタルを活用することで店舗とECサイトを連携させ、質の高い顧客体験を提供しています。
同社では、店舗に在庫が無い場合でも、EC在庫を顧客の自宅に送る「SMART ORDER」というサービスを提供しており、顧客の「入荷待ち」の待ち時間削減に成功しています。
また、顧客からのオーダーを受け付ける際に会員番号や電話番号、住所を毎度確認することは、顧客とスタッフ双方にとって負担になってしまいます。
そこで同社では、提供アプリ「SHEL’TTER PASS(シェルターパス)」のアプリ上で会員ログインさえしていれば、バーコードをかざすだけで会員情報が判別される仕組みを導入しています。顧客のバーコードが読み込まれると、倉庫から直接、顧客の自宅まで商品が届くようになります。
このオンラインとオフラインの連携がもたらすメリットとしては、例えば、いつも立ち寄る最寄りやお気に入りの店舗にお目当てのアイテムやサイズ、カラーの在庫が無いケースがあります。
せっかく店舗に足を運んでくれた顧客に対し、手ぶらでそのまま帰宅を促すというのは「良い顧客体験の提供」とは言えません。
お店にない在庫を自宅まで郵送してもらえることにより、顧客は最短期間で商品を手に取ることができ、再度店舗に足を運ぶ手間が無くなります。
また、在庫移動の手間やコストは企業側にとってもデメリットがあるため、顧客にとっても現場スタッフにとっても、そして企業自体にとってもWin-Winな取り組みと言えるでしょう。
加えて、「買い物は実物を見たい」というニーズにも応え、シェルターパスでは各店舗の在庫をオンラインで確認することも可能です。
これにより「店舗に行ってみたけれど、在庫が無くて無駄足になってしまった」という顧客の悩みを解決できますし、現場スタッフ側としても在庫確認の問い合わせが減ることで店舗での接客や作業に集中しやすくなります。
ちなみに、シェルターパスでは、オンラインで購入した商品を店舗に受け取りに行く、いわゆるBOPIS(※1)の取り組みも行っており、一部店舗で既に実施が開始されています。(※2)。
さまざまな顧客のニーズに応えることで、自由で快適な顧客体験提供ができるのは、シェルターパスの強みと言えるでしょう。
バロックジャパンリミテッドの顧客体験事例をまとめると、以下の3点になります。
- 顧客の待ち時間や心理的・肉体的負担を最小限に減らしストレスフリーな体験提供
- オンラインとオフラインを連携させ、顧客は好きな方法で買い物ができる
- 顧客と現場スタッフ双方の体験向上(CX、EX ※3)
【アプリダウンロードページ】
Google Play/App Store
※1 BOPIS(Buy Online Pick-up In Store):オンライン上で商品を購入し、最寄りの店舗まで商品を取りに行く買い物方法のこと
※2 THE SHEL’TTER TOKYO(表参道)のみ、ECサイト内で店舗受け取りを選択可(2022年4月時点)
※3 EX(Employee Experience):直訳すると「従業員体験」という意味で、従業員が企業で働く上で得られる体験のこと
エノテカ – オンライン接客により、嗜好性の高いワインという商品と顧客の繋がりを強固に
最後に紹介するのは、食品関連において顧客体験を高めた、ワインの輸入販売やワインショップ運営で有名なエノテカの事例です。
全国60店舗以上のワインショップを構えるエノテカですが、
“FOR ALL WINE LOVERS すべてのワイン愛好家のために奉仕する”
という理念のもとに、オンラインとオフラインの垣根なく、ワイン専門店としてのサービス提供をしており、全国のワイン愛好家に愛されています。
大きな特徴は2つあり、【1】嗜好性の高いワインという商材を顧客が気軽に選べる手助けをしている点と、【2】ワイン診断やテイスティングなどのコンテンツにより、リアルでの体験とオンラインを紐づけた遊び心のあるワイン体験が提供されている点です。
提供するECサイト「ENOTECA online」の中にある「ワイン診断」は、ECサイトやアプリ上で利用できるコンテンツ。
ユーザーは質問に答えていくことで、ワインの好みを細かく割り出し、今日の気分にぴったりのワインを見つけることができます。
ワインにはさまざまな種類があるため、特にワインに詳しくない人にとっては自分に合ったものを選ぶのはなかなか難しいかもしれません。
オンラインで購入を検討しているユーザーも、実際に店舗で接客してもらうように自分の好みに近いワインを見つけられるのはメリットでしょう。このワイン診断は店舗でもテイスティングをしながら行うことができ、実際に味わって自分の好みを発見できます。
また、店舗スタッフとしては、顧客の好みをしっかり理解することでより質の高い情報提供を行えますが、そのためには「美味しかった」「美味しくなかった」など購入後の顧客の感想を聞かないといけません。
エノテカのアプリに搭載されている「マイワイン」では、【1】購入した商品、【2】パーソナルレポート、【3】ワイン診断、【4】ワインノートの4つの機能があり、顧客の好みを可視化できる仕掛けになっています。
なかでも、「ワインノート」機能では、購入したりテイスティングしたワインの感想をメモに残すことで、顧客自身の備忘録になるだけでなく、スタッフに提示し顧客が自分の好みを分かりやすく伝える手段になります。
また、購入傾向をレポート化して表示させられる「パーソナルレポート」では、購入したワインの品種や産地などをひと目で見ることができます。
エノテカでは、他にもスタッフによるレビューを紹介していたり、ワインに関わる顧客体験を高める取り組みを行っています。
エノテカの顧客体験向上から学べるポイントは以下の通りです。
- 嗜好性が高く、オンライン販売の難易度が高いワインの特徴をフルに生かしたコンテンツ提供
- オンラインでも店舗でも自分の好みを発見できる、テイスティングのDX
- 顧客の好みをデータから傾向分析し、ワインに関する情報提供の精度を向上
【アプリダウンロードページ】
Google Play/App Store
成功事例から学ぶ、顧客体験向上に欠かせない2つの視点
今回紹介した事例は、業界も利用するツールも多種多様でしたが「顧客にとってのよい体験を提供するために、サービスをアップデートしている」点はすべての事例に当てはまるといえます。
彼らの取り組みに共通することは、大きく分けて2点あります。
【1】顧客の心理・感情に寄り添った体験提供をすること、そして【2】今ある常識にとどまるよりも、顧客にとってのメリットを追求することです。それぞれ見ていきましょう。
顧客の心理・感情に寄り添った体験提供をする
顧客体験を提供する上で忘れてはいけないことは、相手が“人”であること、そして“人”と心理的・感情的な要素は切っても切り離せないということです。
「経験価値マネジメント」の著者として知られる心理学者バーンド・H・シュミットは、人が感じる心理的・感情的な価値を以下の5つであると定義しています。
- Sense(感覚的)
- Feel(情緒的)
- Think(知的)
- Act(行動、ライフスタイル)
- Relate(社会性)
1. Sense(感覚的)
視覚、聴覚、嗅覚といったいわゆる五感を刺激することを指します。
2. Feel(情緒的)
顧客の内側にある感情、感覚に訴えかけることを意味します。
3. Think(知的)
顧客の知的欲求や創造性を刺激することです。
4. Act(行動、ライフスタイル)
顧客の行動やライフスタイルに訴求する経験のことで、新たな体験や、生活スタイルを提供する価値です。
5. Relate(社会性)
ある集団や文化に属している感覚を提供することで、自分がメンバーであると認識することによる特別感を味わえます。
例えば、今回紹介したNetflixは自宅でいつでも好きなコンテンツを気軽に見られる体験を提供することで、“Act(行動、ライフスタイル)”を提供しています。
また、スターバックスであれば、美味しいコーヒーが“Sense(感覚的)”を満たし、おしゃれで落ち着いた空間によって“Act”はもちろん、「スタバ」という文化に属する“Relate(社会性)”も提供できているかもしれません。
あなたの企業やブランドは、これら5つの価値を提供できているでしょうか?
今回の紹介事例を参考に、顧客の心理的・感情的な部分に訴求するサービス提供を考えてみましょう。
■参考:「CX(カスタマー・エクスペリエンス)戦略:顧客の心とつながる経験価値経営参考(田中達雄)
今ある常識にとどまるよりも、顧客にとってのメリットを追求する
今回紹介した企業はすべて、自社独自の価値を提供しています。
その背景にあるのは、「当たり前」と思われていることに迎合するのではなく、新しいサービスのあり方をどんどん開拓していることにあるのではないでしょうか。
NIKEは圧倒的に先進的なスポーツブランドとして、最新技術を上手く活用しながら、顧客のトレーニングといったライフスタイルにまで自然に溶け込み、唯一無二のブランドとなりました。
Tik Tokは「ユーザーが好みそうな動画をレコメンドする」という常識から一歩外に足を踏み出し、全く関連性のない動画をフィード表示させることで顧客の体験をより刺激的なものにしています。
顧客が欲しいものや抱いている不満の声は、必ずしも自社まで届くとは限りません。顧客自身も気付いていない場合だってあります。
市場の動向を見つつ、自社の顧客が本当に求めているものは何か、負をどのように解消するのかを検討しサービスに生かしましょう。
まとめ
顧客体験の事例は、企業によって大きく特色が異なります。
それはビジネスモデルやターゲット顧客、企業のビジョンによって適切な体験設計が大きく変わるためと言えるでしょう。今回紹介した以外にも、様々な事例を参考にしてみて、自社の顧客体験を高めるヒント探しをして頂けたらと思います。
以下の資料では、アプリを導入し顧客体験向上に繋げた企業の事例を掲載しています。
本記事で紹介した事例とは異なり、“スマホアプリ”という一つの切り口にはなりますが、自社の顧客体験向上の一助となれば幸いです。