日本のスマートフォンユーザーは平均約82個のアプリを所持しているというデータもあるなど、ユーザーは多種多様なアプリを日常的に利用しています。しかし、インストールされたアプリの全てが利用されているわけではなく、実際に利用されているアプリの利用率は約30%にとどまっています。そんななか、アプリの継続率・コンバージョン率などの向上に役立つ技術として活用されているのが「ディープリンク」です。
本記事では、ディープリンクの基本的な仕組みや種類、実装方法から実際の活用事例までを網羅的に解説します。ディープリンクの活用を検討中の方は、ぜひご覧ください。
ディープリンクとは?
ディープリンクとは、Webぺージやアプリなどからアプリ上の特定のコンテンツに直接遷移するリンクのことです。
従来は、特定のWebぺージからほかのWebサイトのぺージ・コンテンツに直接リンクすることを意味する言葉として使われていました。しかし、スマートフォンの普及に伴うアプリ利用率の増加により、アプリ内の特定画面や機能にスムーズに遷移できるリンクもディープリンクと呼ばれるようになっています。
たとえば、特定の商品のクーポンを配布したいケースで考えてみましょう。ディープリンクを設定していない場合、ユーザーはアプリを開いて商品を探し、クーポン対象の商品画面までたどり着く必要があります。
しかし、ディープリンクを設定しておけば、SNSの投稿やスマートフォンのプッシュ通知などからワンタップでアプリ上の対象ページへ直接アクセスできます。ユーザー側の操作の手間を減らしつつアプリの利用率向上にもつながります。
ディープリンクの活用例
ディープリンクの活用例として以下のようなものが挙げられます。
- マップアプリ×ディープリンク
- ECアプリ×ディープリンク
マップアプリ×ディープリンク
マップアプリとディープリンクを連携させると、ユーザーが目的地を見つけやすくなるだけでなく、店舗側にも大きなメリットがあります。
たとえばグルメサイトで店舗の住所をタップすると、Google Mapなどが自動的に起動し、ピンが立った状態で場所が表示されます。ユーザー側は、店名の入力やルート検索の手間なく迷わずに店舗まで到着できます。また、同じような店舗があったり店舗名が長かったりすることが原因で他店舗へ流れるリスク低減できるため、機会損失の防止にも役立つでしょう。
ECアプリ×ディープリンク
ECアプリにディープリンクを導入すると、SNSやWebページで商品リンクをタップするだけでアプリが起動し、該当商品ページへ直接アクセスできます。
たとえばECアプリのトップページへ遷移するのみの場合、SNSやWebぺージなどで見かけたアイテムと同じものを探す手間がかかり、ユーザーの購入意欲が下がる恐れがあります。しかしディープリンクを使えば、ユーザーはスムーズに目的の商品へたどり着けるため、離脱率の低減と売上向上が期待できます。このような仕組みにより、購入意欲を維持したまま購買までつなげられる点も、ディープリンクの魅力です。
ディープリンクのメリット
ディープリンクを活用するメリットは以下の3つです。
- ユーザー体験の向上
- コンバージョン率の向上
- アプリの継続率の向上
ユーザー体験の向上
ディープリンクを活用することで、アプリ内に掲載されているコンテンツ商品に直接アクセスできるため、ユーザー体験を向上できます。
たとえばECアプリのように取り扱い商品が多い場合、ディープリンクがないとユーザーはアプリを起動してから目的の商品を検索して探す必要があります。購入までの導線が複雑になり手間が増えるため、ユーザーにストレスを与えかねません。しかしディープリンクを活用すれば、アプリ上で商品を探す手間が省き目的の商品にすぐにたどり着けます。スムーズな導線がユーザーの満足度を高め、リピート率の向上にもつながります。
コンバージョン率の向上
ディープリンクでは、アプリのダウンロードページやアプリ内の特定コンテンツ・商品ページなどに直接アクセスできるため、ダウンロードや購入がスムーズに完了します。手順の簡素化により離脱率が下がり、コンバージョン率向上と収益拡大が期待できます。
また、新規ユーザーをチュートリアルやウェルカム画面へ誘導することもできるため、初期段階の利用継続を後押しできます。さらに、広告から目的ページへ直リンクすれば、購買意欲を維持したままアクションにつなげられ、売上増にも大きく貢献します。
アプリの継続率の向上
ディープリンクを導入することで、メールやSNSの通知から特定のアプリ内機能やコンテンツへ直接移動できるようになり、ユーザーの興味を引きやすくなります。その結果、アプリへの関心を高めることができ、継続率の向上につながるでしょう。
また、更新情報やイベント内容をタイムリーに届けることで、休眠ユーザーの再活性化にも効果的です。特に定期的に新しい要素を追加するアプリでは、ディープリンクの仕組みによりユーザーをスムーズに誘導できるため、長期的な利用を促進できます。
ディープリンクの種類
ディープリンクの代表的な種類は以下の2つです。
- ダイレクトディープリンク
- ディファードディープリンク
ダイレクトディープリンク
ダイレクトディープリンクは、アプリがインストールされている場合に特定ページへユーザーを誘導します。既存ユーザーを対象としたリターゲティングに活用しやすい点がメリットです。離脱したユーザーを再アクティブ化して購入ページなどへ誘導できるため、アプリの継続利用や収益向上にもつながります。また、AndroidやiOSのプラットフォームが標準で提供している機能を利用して実装でき、比較的導入しやすいのも特徴です。
一方で、アプリが未インストールの場合はエラーが発生するため、新規ユーザーの獲得には不向きな点がデメリットです。そのためダイレクトディープリンクは、既存ユーザーを対象にリターゲティング広告を配信したり、スマートフォン上でプッシュ通知を送信したりする活用方法が効果的です。
ディファードディープリンク
ディファードディープリンクは、アプリ未インストールの場合でも、インストール後に元のリンク先へ自動で誘導します。広告をタップしてストア経由でダウンロードした後、アプリ起動時にユーザーが移動したかったページが表示されるため、新規ユーザー獲得に効果的です。
興味を持った商品やコンテンツへスムーズにアクセスできるうえ、不要な操作を減らして離脱率を減らし、コンバージョン率向上につなげられる点がメリットです。また、広告経由の行動を分析しやすくなるため、マーケティング施策の最適化にも役立ちます。
ただし、実装にはSDKというソフトウェア開発キットの導入が必要で、ダイレクトディープリンクより開発の難易度がやや高い点がデメリットです。
ディープリンクを実装する仕組み
先述したダイレクトディープリンクとディファードディープリンクを実装する仕組みには、以下のようなものがあります。
- Custom URL Scheme
- Universal Links
- App Links
Custom URL Scheme
Custom URL Scheme は、ダイレクトディープリンクの実装に使用されます。アプリ固有のスキームを通じてリンクタップ時にアプリを直接起動し、タップ時に「アプリを開きますか?」のメッセージを表示して同意されれば該当画面へ遷移します。なお、アプリ未インストール時はエラーとなります。
実装が比較的容易で自由度も高く、iOS・Android双方に対応しやすい点がメリットです。ただし、確認ダイアログが表示されるため、UX(ユーザーエクスペリエンス)が悪くなってしまう点がデメリットです。
iOSの場合のおおまかな実装手順は、以下のとおりです。
- アプリのURL形式を定義する
- スキームを登録する
- 受信したURLを処理する
さらに詳しい実装方法は以下記事で解説されています。
Apple Developer Documentation「Defining a custom URL scheme for your app」
Universal Links
Universal Linksは、ダイレクトディープリンクを実装可能です。iOSに対応しており、対応ドメインのリンクをタップするとSafariを経由せずアプリが起動します。HTTPSリンクを直接アプリで開くため、Webサイト側に設定ファイル「apple-app-site-association」を配置して特定パスを関連付ける必要があります。
通常のWebリンクと同じ見た目で、未インストール時はサイトへ遷移するためUXが自然な点がメリットです。また、Apple公式の仕組みのためセキュリティ面も安心できます。一方、設定作業に手間がかかり、ユーザーのデバイス設定次第ではアプリ側で開けない場合がある点がデメリットです。
おおまかな実装手順は以下のとおりです。
- 「apple-app-site-association」という名前のJSONファイル を作成する
- ファイルをHTTPSWebサーバーにアップロードする
- ユニバーサルリンクを処理できるようにアプリを準備する
さらに詳しい実装方法は以下記事で解説されています。
Apple Developer「App Search Programming Guide: Support Universal Links」
App Links
App Linksは、ダイレクトディープリンクを実装できます。Androidに対応しており、Universal Links同様にHTTPSリンクを直接アプリで開くため、Webサイト側に設定ファイル「Digital Asset Links(JSON)」を配置してアプリと紐付けます。
アプリがインストール済みであれば特定画面へスムーズに遷移でき、未インストール時はWebページへ誘導されるため自然な導線を構築できる点がメリットです。一方、JSONファイルやSHA256証明書の取得、端末やOSバージョンによって挙動が変わる場合があるため、設定や動作検証に手間がかかる点がデメリットです。
おおまかな実装手順は以下のとおりです。
- インテントフィルタをマニフェストに追加する
- 受信インテントからデータとアクションを取得する
- Android Debug BridgeとActivity Managerツールを使用してテストする
さらに詳しい実装方法は以下記事で解説されています。
Android Developers「アプリ コンテンツ用のディープリンクを作成する」
ディープリンクの実装には開発チームが必要
ディープリンクはiOSとAndroidで実装方法が異なるだけでなく、プラットフォームごとに「AndroidManifest.xml」や「Info.plist」といった設定ファイルの編集、さらにアプリとWebサイトを関連付けるための設定も必要です。そのためディープリンクの実装には、モバイルアプリ開発の知識を有する開発チームによる対応が必要です。
しかしツールを活用すれば、マーケターでもディープリンクを作成することができます。**ディープリンクを作成できるツールに、モバイルアプリ広告効果測定ツール「Adjust(アジャスト)」**があります。
引用:Adjust
「Adjust」に搭載されている機能であるTrueLinkは、マーケターであってもAndroid・iOS両方に対応したディープリンクを作成できます。加えて、SNS・メッセンジャー・SMS・Webといったマルチプラットフォームで使用できるため、ユーザー体験向上だけでなくマーケティング戦略の最適化にも役立ちます。
SNS媒体で利用できるディープリンク
ディープリンクはSNS媒体でも利用可能です。利用できるSNS媒体とサービス・機能名は以下のとおりです。
- Facebook|App Links
- X|App Cards
Facebook|App Links
Facebookでは**「App Links」というディープリンク機能を提供しており、投稿にアプリへのリンクを含めることで、ユーザーはFacebook上から直接特定のアプリ画面へ移動**できます。アプリが未インストールの場合は、Webページやアプリストアなどへ誘導されるため、アプリ間の移動をシームレスにできます。ただし、アプリ側でURLスキームを設定しておく必要がある点に注意が必要です。
たとえば、上記投稿の「アプリのダウンロードはこちらから⇒」のリンクをクリックすると、以下のGoogle Playのぺージに遷移します。
引用: Google Play「ことりっぷ-週末の旅行&カフェ情報もりだくさん。写真投稿も」
X|App Cards
Xでは、ツイートにApp StoreやGoogle Play上のアプリ情報を表示できる「App Cards」を提供しています。未インストールのユーザーにはアプリのダウンロードを促し、インストール済みの場合はアプリ内のコンテンツへスムーズに誘導できます。テキストと画像を組み合わせて表示する「イメージアプリカード」と、テキストと動画を組み合わせて表示する「ビデオアプリカード」の2種類あり、X広告管理画面から作成可能です。
引用:X「TemuJapan on X」
たとえば、上記投稿の画像をクリックすると、以下のWebぺージに遷移します。
引用:Temu
Google Playのボタンをクリックすると、以下のアプリストア上のダウンロードページに遷移します。
引用:引用: Google Play「Temu: 億万長者気分でお買い物」
ディープリンクの活用例
ディープリンクには以下のような活用例があります。
- 広告に使用して購入促進
- クーポン施策に使用して休眠顧客の掘り起こし
広告に使用して購入促進
ディープリンクの活用例に、広告からアプリ内のセールやプロモーションへ直接誘導し、購入を促す方法があります。たとえば、ECアプリの広告を出稿して購入促進したい場合、セール告知の広告リンクをSNS上で配信し、クリックするとセール対象ぺージに遷移するように設定します。すると、目当てのページに直接アクセスでき商品を探す手間が省けるため、購入意欲を維持しながら購買につなげられます。
クーポン施策に使用して休眠顧客の掘り起こし
ディープリンクを活用したクーポン施策は、休眠顧客の掘り起こしにも有効です。たとえば、プッシュ通知で限定クーポンを配布し、その通知からアプリ内のクーポンページへジャンプできる仕組みを作ることで、ユーザーがクーポンを利用する手間を軽減できます。また、クーポン内容や通知内容をパーソナライズすれば、より高い効果が期待できます。
弊社が提供するアプリプラットフォーム「MGRe(メグリ)」は、ディープリンクを活用したプッシュ通知により、アプリ内のクーポンをはじめとするあらゆる画面やWebページなどに遷移先を設定できます。
通知をタップするだけでクーポンのあるページに直接アクセスできるため、クーポン利用へのハードルを下げ、休眠顧客の再活性化につなげられます。さらに、顧客の属性や「レギュラー会員」「ゴールド会員」といった会員種別に応じたセグメント配信も可能なため、休眠顧客をターゲットに特典案内を行うこともできます。
また、通知件数やセグメントの有無による追加料金が発生しないため、コストを気にせず多様な施策を試せるのもメリットです。このように、MGRe(メグリ)の機能をを活用することで、休眠顧客への効果的なアプローチと購買意欲の促進が同時に実現できます。
まとめ
ディープリンクは、アプリ内の特定コンテンツへ直接誘導することで、ユーザーの操作手間を減らし、アプリの利用率やコンバージョン率を向上させることができます。既存ユーザーへのリターゲティングに向いているダイレクトディープリンクと、新規ユーザーの獲得に強いディファードディープリンクの2種類あるうえ、それぞれ実装方法も異なります。
本記事で紹介したディープリンクの種類や特徴、実装方法などを理解し、自社に適したディープリンクを導入してアプリマーケティングを成功させましょう。