あなたの企業では、新規顧客獲得とリピーター獲得、どちらに力を入れているでしょうか。また、ちょうどいいバランスで成果が上がっているでしょうか。
この記事にたどり着いたということは、新規顧客獲得に注力してきたものの、リピーター獲得に対しても重要性を感じるようになったのかもしれません。
または、リピーターを増やすべき理由は既に理解しており、成果を出すためのヒント探しをされている方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、上記のような方に向けて、リピーターが重要な理由を改めて確認した上で、リピーターを増やすために効果的な施策を紹介していきます。
<こんな方におすすめ>
- リピーターを増やしたい方
- 顧客数は多いものの、利益がなかなか上がらない方
- リピーター向け施策にはどのようなものがあるか知りたい方
なお、リピーターの離反対策については「顧客離れを防ぎ、リピーターを獲得するには?よくある離反要因とその対策」にて解説しています。
顧客離れの原因を知りたい方や、リピーター向け施策に既に取り組んでいる方は、あわせて参考にしてみてください。
リピーターはなぜ重要?
リピーターとは、2回以上自社商品を購入したことのある顧客や、継続的に契約を維持してくれている顧客のことを指します。
では、なぜこのリピーターが重要なのでしょうか?
結論からお話しすると、費用対効果が高く、長期的な利益を期待しやすいのはリピーターであるためです。
つまり、企業が利益を出し続けて、長く存続していくためにはリピーターの存在が必要不可欠ということです。
新規顧客の獲得コストは5倍かかると言われている
そもそも、顧客は「新規顧客」と「リピート顧客(リピーター)」の大きく2つに分けられます。
どちらもバランス良く獲得できていることが重要ですが、陥りがちな失敗例として、新規顧客獲得に注力しすぎてリピーターをほったらかしにしてしまうケースがあります。
これは避けた方が良く、理由としては、新規顧客を獲得するためには広告や販促活動への投資が必要になるためです。
つまり、新規顧客を1人獲得するためには、プロモーション費用などのコストが高くつきやすいのです。
反対に、リピーターは自社に対する購買モチベーションが高い傾向にあり、少ないコストでも狙った効果を生み出しやすい傾向にあります。
そのため、同じ売上額だとしても、リピーターの方が高い利益をもたらす可能性が高いです。
上図:弊社記事「買ってもらえるECサイトを作る4つの心得|意識するべきは“売上額”よりも“LTV”」より
実際にマーケティングでよく言われる教えとして、「1:5の法則」や「パレートの法則」などがあります。
- 1:5の法則:新規顧客獲得にかかるコストはリピーター獲得/維持にかかるコストの5倍であるということ
- パレートの法則:売上の8割を支えるのが2割の顧客(=リピーター)
もちろん、未来のリピーターを創出するためには、新規顧客の獲得が必要なことは間違いありません。
あくまで、ここで覚えておきたいのは、新規顧客獲得の一辺倒になってしまうと経営が不安定になりやすく、リスクが大きいという点です。
リピーター率・リピート率の違いと計算方法
リピーターを増やすためには、「リピーター率(Repeat Purchase Rate)」と「リピート率(Repeat Rate)」を知ることが大切です。
- リピーター率:既存顧客のうち、リピーターが占める割合
- リピート率:新規顧客のうち、リピート購入した顧客の割合
それぞれの計算方法は以下の通りです。
リピーター率の算出方法
リピーター率 = リピート購入した顧客数 ÷ 総顧客数 × 100
たとえば、あるECサイトの1週間の顧客数が200人で、そのうち2回以上商品を購入した顧客数が20人の場合、(20人÷200人)×100=10%という計算になります。
リピート率の算出方法
リピート率 =
(特定期間の)リピート購入者数 ÷ (特定期間の)総顧客数 × 100
たとえば、ある店舗で1ヶ月のうちに購入した顧客が300人で、そのうちリピート購入を行った顧客数が30人の場合、リピート率は30÷300×100=10%です。
つまり、「リピーター率」は、すべての顧客の中でリピーターがどのくらいいたのかを表し、「リピート率」は、特定期間の中でどのくらいの顧客がリピート購入したのかを示します。
リピーターを増やすために行うべきこと3つ
企業が存続するために重要な存在であるリピーターですが、どのように増やしていけば良いのでしょうか。
ここでは、リピーターを増やすために準備しておきたいことをお伝えします。
【1】現状把握
今、自社の売上を構成する顧客の割合はどのくらいかを調べましょう。ポイントは、売上だけでなく利益がどれほど得られたのかを併せて確認することです。
やり方の一例としては、顧客を新規(1回目購入)とリピーター(2回目以降)に分け、売上全体に占める割合を見ます。
全売上(100%)中、それぞれが何パーセントを占めるか分かったら、新規顧客、リピーターそれぞれにかかったマーケティング費用を確認しましょう。いわゆる“営業利益”を算出するのです。
こうして計算をしてみると、「なかなか利益が上がらないと思っていたら、想定以上に広告・プロモーション費にお金をかけすぎていた」「新規顧客向けの割引施策をやりすぎて利益度外視になってしまっていた」というケースもあるので、現状把握は必ず念入りに行うようにしましょう。
顧客がもたらす利益の計算方法については、LTVの記事で詳しく解説しています。あわせて参考にしてください。
【2】顧客情報を適切に管理する
自社の顧客情報を管理することも、リピーターを増やす上では重要です。
ここでおすすめしたいのが、CRMの導入です。
CRMとは、自社の顧客情報を適切に管理するためのツールのことです。
なぜリピーターを増やすためにCRMが必要なのかというと、CRMを導入することで、リピーターの購買傾向を把握でき、個々に合わせたコミュニケーションを行う上でのヒントを得られるためです。
CRMについては以下の記事で解説しているので、気になる方はご覧ください。
CRMを活用しリピーターを増やす方法としては、例えば下記が挙げられます。
- CRMに登録されている顧客に向けて、顧客満足度調査を実施する
- CRMのセグメント配信機能を活用し、リピーターにのみ情報発信をする(※)
- WebサイトやPOSなどオンライン・オフライン双方における顧客データを1つにまとめ、顧客分析の精度を高める→商品改良や施策実施にその情報を生かす
ここで重要なのは、CRMを導入することというよりも、自社の顧客のことをきちんと知ることと、それぞれの顧客に対して適切なコミュニケーションを行える環境を作ることです。
それが実現出来ている場合には、無理にCRMを導入する必要はありません。
ですが、CRMはかなり便利なツールですし、最近では月額1000円台から利用できるリーズナブルなものもあります。この機会に導入を検討してみるのも良いかもしれません。
※ツールにより機能が搭載されているものとそうでないものがありますので、詳細は各提供ベンダーに相談してみてください。
【3】リピーター向け施策の実施
売上や利益についての現状把握と顧客情報管理を行える環境づくりができたら、リピーターに向けた施策を打ちましょう。
具体的な施策については次項でお伝えします。
リピーター向け施策
そもそも、リピーター向けの施策とはどのようなものを指すのでしょうか。
下記は小売業を例にとり挙げていますが、顧客との接点を作るチャネルには、新規顧客により向いているものとリピーターの方が向いているものの大きく分けて2つのタイプがあります。
■新規顧客に向いている:Webサイト、SNS、広告
■リピーターに向いている:店舗、LINE、アプリ、メルマガ
なお、それぞれの施策はあくまで「どちらかといえば」向いているという意味合いで分類しています。必ずしもどちらかにしか効果が無いというわけではありません。
例えば、店舗は接客がメインであることもあり、どちらかといえばリピーター向けではあります。とはいえ、施設としてそこにあることで、近隣施設に足を運ぶ消費者にブランドを認知してもらえたり、初回購入のきっかけになることもあります。
また、広告については新規顧客向けのものが多いですが、広告によっては顧客に「自社を思い出してもらう」きっかけになるものもあります。
【1】店舗
店舗は、顧客と最も密接なコミュニケーションを行える場所です。
最近はECの普及で店舗数が減っている企業も多いですが、「ショールーミング ※2」や「BOPIS ※3」など、新たな店舗の活用方法も増えています。
オンラインが普及しXR技術※4が発展しているとはいえ、店舗に勝るほどの体験や情報量を提供できるチャネルは、現状他にはありません。
例えば、洋服の着心地を確かめたり、着脱のしやすさを確認することはバーチャルでは難しいでしょう。素材の質感や光沢を確かめることも、実物のサイズ感を見てみることもリアルだからこそできることです。
とはいえ実店舗の運営はランニングコストが大きくかかる施策になるので、自社に合っている施策なのかを踏まえた上で、店舗を持つのか、それとも持たないのか選択することが大切です。
※2 ショールーミング:実店舗をショールームとして活用する購買方法のことで、店舗で実際の商品を確認してからオンラインで購入できる
※3 BOPIS(Buy Online Pick-up In Store):オンライン購入した商品を店舗まで受け取りに行く購買方法のこと
※4 XR:AR・VR・MRなど、バーチャルのものを現実のように体験できる技術の総称
【2】LINE
総務省の調べによると、令和2年度時点でのLINEの普及率は、10代から40代においては90%を超えています。
LINEであれば、新しいアプリをダウンロードしなくても気軽に自社のアカウントを登録してもらえるため、最初のハードルが低いです。
また、企業側としても公式アカウントは無料で始められるため、導入コストの心配なく試せるメリットがあります。
1回目に購入した顧客の、2回目以降の購入を増やすために、まずはLINEアカウントを登録してもらうことがファーストステップです。
■参考:総務省「令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」(https://www.soumu.go.jp/main_content/000765135.pdf)
【3】アプリ
アプリは「リピーター向け施策のためにある」と言っても良いくらいで、リピーターを増やしたり顧客との関係値を高める上では重要な施策です。
ダウンロードする手間こそありますが、そのハードルさえ超えられれば、顧客のスマホに自社のブランドのアイコンが表示され身近な存在になることができます。
プッシュ通知やDMを送ることで興味関心や購買を促せますし、LINEやメルマガなどに比べて設計も自由なため、自社の世界観も表現できブランディング的な要素にもなります。
アパレル企業の事例とはなりますが、アプリ導入の成功事例を以下の記事で紹介しています。
アプリを活用してリピーターを増やしたい方は、ぜひお読みください。
【4】メルマガ
メルマガも、まずは登録してもらう必要があるのでリピーター施策となります。
顧客の検討段階に合わせて配信内容に変化をつけるステップメールを活用したり、開封率を測ることで顧客が興味のあるテーマを探ったりと、活用方法はさまざまです。
ただし、最近ではSNSやLINEの普及でコミュニケーションツールとしてメールを使わなくなってきたので、顧客にタイミング良くメッセージが届かないケースも増えています。自社の顧客のタイプや年代によって、力の入れ具合は検討しましょう。
施策を行う上での注意点
さいごに、リピーターを増やすうえで気を付けておきたいことをお話しておきます。
リピーター向けのチャネルは別に分ける
チャネルとは、顧客との接点を作る場所(店舗、LINE、アプリなど)のことを指しますが、リピーター向けと新規顧客向けのチャネルは明確に分けることをおすすめします。
例えば、新規向けの施策として、クリック課金型のWeb広告を打ったものの、その広告をリピーターが踏んでしまい余分なお金がかかってしまうことがあります。
こういったことを防ぐためにも、リピーター向けのチャネルは明確に分け、リピーター向けのメッセージを先に出す→リピーターに情報が浸透したタイミングで新規顧客に向けた広告を発信するといった順番で施策の使い分けをすると良いでしょう。
新規・リピーター比率はバランスが重要
新規顧客だけに力を入れていれば利益率が下がりますが、リピーター施策だけに注力するというのも長い目でみると得策とは言えません。
将来のリピーターを育てるためには、その分母となる新規顧客を一人でも多く獲得することが重要になるためです。
新規顧客になってもらうために自社を多くの人に知ってもらうことと、既存顧客との関係値を良好に保つことは、どちらも比較できないほど重要です。
自社が持つ現状の課題に合わせ、工夫しながらバランス良く施策を行いましょう。
リピーター獲得後はつなぎとめる工夫を
新規顧客をリピーターにするためには、リピーターを維持する5倍ものマーケティング費用がかかることを冒頭でお伝えしました。
いくら売上が高くても、その分広告費やプロモーション費がかさんでしまっていては、健康的な経営ができているとは言えません。
「F2転換率(新規顧客のうち、2回目の購入に繋がった人の割合)」を上げるための取り組みを行いましょう。
また、リピート率を高めるためにコミュニケーションの頻度や質を高めたり、ロイヤルカスタマーへ還元するためにはどうすればよいのか、自社内で定期的に話し合うことも大切です。
まとめ
リピーターを増やすためには、まずは現状把握と適切な顧客管理を行った上で、リピーターに合う施策を進めていくことが重要だとお話しました。
リピーター獲得にとって重要なことは、顧客との信頼関係を構築していくことです。
なお、リピーター施策の一つとしてアプリをご紹介しましたが、弊社が提供する『MGRe(メグリ)』というアプリ開発・運用プラットフォームでは、リピーター向け施策に取り組むサポートを行っています。
アプリの導入に興味がある場合には、CRMとの連携や導入後のフォローアップも行っているので、まずはあなたの企業にアプリが合っているのかも含めて気軽にご相談ください。