「情報発信はしているのに、顧客からの反応が薄い」
「メルマガの配信停止や、アプリのアンインストールがなかなか減らない」
マーケティングや販売促進を行う上で、このような悩みに頭を抱える担当者は少なくはないはず。
顧客との関係構築における課題を持っている方は、顧客の趣味趣向や特徴に合わせた発信をすることで、現状から改善されるかもしれません。
今回はこのようなお悩み解消につなげるべく、コミュニケーションのパーソナライズに必要不可欠な手法である「セグメント」の考え方や実施方法を紹介します。
セグメント(セグメンテーション)とは
セグメントとは、ユーザーの特徴や購買・行動履歴などの切り口から分類されたユーザーグループのことを指します。
また、このセグメントへとユーザーを分類し、マーケティングに活用するプロセスのことをセグメンテーションと呼びます。
セグメンテーションについては、ホワイトペーパー「アプリ図解百科【運用編】」でも解説しています。アプリ用語を図解で解説しているので、気になる方はあわせてお読みください。
アプリ内での「パーソナライズ」に有効
近年、ユーザーの肌悩みに合わせて配合成分をカスタムできる化粧品といったパーソナライズ商品など、ユーザーの趣味趣向やお悩みに寄り添うサービス提供は増えています。
商品開発技術が成熟して、ユーザーは品質よりも一歩先のサービスを求める傾向にあります。
その一方で、すべてのサービスやマーケティング活動において、対個人へのカスタマイズが必須とは限りません。
ある程度の人数がいるクラスター(集団)くらいの粒度でセグメントする場合もあれば、個人レベルでセグメントする場合もあります。
少なくともアプリにおいては、担当者の運用負担や費用対効果を加味したときに、下図のファネル中央にあるようなクラスター(集団)単位で十分なケースは多いです。
■出典:弊社記事「One to Oneマーケティングが必要な理由と、取り組む前に知っておきたい3つの事実」
つまり、パーソナライズは1to1で行うことが必須ではありません。
セグメントを上手く活用して、最適な粒度で実施することが大切です。
One to Oneマーケティングの考え方や実施イメージについては、以下の記事で詳しく紹介しています。パーソナライズに興味のある方は、併せて参考にしてください。
アプリでのセグメント活用に期待できる効果
セグメント活用(セグメンテーション)には、以下の3つの効果が期待できます。
【1】ユーザーの体験価値向上
セグメントを活用すると、ユーザーが得られる情報やサービスの質が高まり、結果的に体験価値の向上につながります。
KPMGコンサルティング株式会社が消費者88,000人を対象に実施した調査(※)では、「『パーソナライズ』された顧客体験は、顧客ロイヤルティを高める最も重要な要素」であるという調査結果が出ています。
デジタル化が進む今、オンラインでのよりよい体験提供を課題とする企業は多いことでしょう。
セグメントを活用することで、顧客に趣味趣向に合わせたコミュニケーションを行い、ユーザー体験の向上につなげられます。
顧客への体験提供をよりよくしたい方は、以下の記事で「顧客体験(CX)」やUXの違いについてなど解説しています。併せて参考にしてみてください。
※参考:「グローバル カスタマーエクスペリエンス エクセレンス(CEE)リサーチ 2021 - 体験をオーケストレーションする」(KPMGコンサルティング株式会社)
【2】顧客とのエンゲージメント強化
セグメントの活用には、顧客とのより強固な関係構築や離脱防止といった効果も期待できます。
実際にTwilioが実施した調査では、日本の消費者の77%が「パーソナライズされたサービスはブランド(企業)へのロイヤルティを高める」と回答し、支出額も増えることが分かっています。
■出典:「顧客エンゲージメント現状分析2023」(Twilio Inc.)
また、2021年に15歳以上40歳未満の男女110名を対象に行った調査(弊社実施)では、約3人に1人が「自分に関係のない通知がきたために、アプリをアンインストールしたことがある」と回答しています。
■出典:弊社(旧・株式会社ランチェスター)実施調査「ブランドアプリのアンインストールの理由ランキング」
これらの調査からも、既存顧客から愛され続けるブランドにするためには、積極的にコミュニケーションを行うだけでなく、ユーザーニーズに配慮された工夫が大切だということがわかります。
なお、顧客との関係構築をするためには、セグメントの活用だけでなく、さまざまな切り口からの取り組みをするとよいです。
以下の記事では、顧客関係管理(CRM)のスペシャリストにヒアリングした、顧客離れを防ぐアイディアを新規顧客・リピーター顧客別にまとめています。顧客との関係構築に課題のある方は参考にしてみてください。
【3】購買促進/売上アップ
アプリ導入にあたり、商品購入の機会を増やしたい、売上アップを狙いたい企業も多いでしょう。
Eコマースプラットフォーム・Adobe Commerceが全米の 1,115人の消費者を対象に実施した調査(※)では、パーソナライズされた商品提案(レコメンデーション)を受けたことがある消費者のうち、72%が「想定より多くの商品を購入することになった」と回答しています。
また、goo Search Solutionが1000人以上を対象に行った調査では、ECサイトで買い物をする際にパーソナライズを希望すると回答した人は4割弱を超え、最も多い割合を占めていました。
■出典:「ECの効果的なパーソナライズとは?購買行動のUXに与える影響を考察」(goo Search Solution)
なお、このパーソナライズへの需要は特に30代までの顧客からの希望が高く、18〜19歳の消費者のうち74.4%、20代は48.7%、30代では47.2%が自分に合った商品提案を希望しています。
もしあなたの企業が30代までの年齢層をターゲットに含めている場合、セグメント配信を活用して顧客それぞれに合わせた発信をすることで、購買率が高まる可能性が十分にあります。
※参考:「Adobe Commerce消費者調査:パーソナライズされた顧客体験の重要性が明らかに」(アドビ株式会社)
セグメントの切り方
セグメンテーションには、大きく分けると【1】属性によるもの、【2】行動によるものの2つがあります。
【1】属性によるセグメンテーション
年齢や誕生月、居住地をはじめとしたプロフィールや会員情報などの属性により顧客を区分します。
属性によるセグメントには、たとえば以下の切り口があります。
- 誕生月
- 年齢
- 性別
- 都道府県
- 会員種別
- 会員ランク(本会員か否か)
- ユーザーID指定 など
活用イメージ
- 誕生月に合わせてクーポンを発行する
- 年代に合わせて情報発信を変える
【2】行動によるセグメンテーション
行動によるセグメントでは、顧客がとった行動をきっかけに情報発信やサービス提供をします。
以下のような行動をきっかけとし、顧客の次の行動を促すアプローチをします。
- ECサイトでの購買活動
- キャンペーンへの応募
- ポップアップ、展示会などのイベントへの参加
- 施設予約/利用
活用イメージ
- ECサイトの購入者にレビューを促す
- イベント参加者にサンクスメールを送る
アプリでの実施方法
最後に、アプリでセグメント配信を実施する方法についてお伝えします。
なお、実施方法はアプリの開発ベンダーによりさまざまであるため、こちらではMGRe(メグリ)での実施方法を紹介します。
【1】CSVファイルによりユーザーIDを取り込む
ユーザーID指定はCSVファイルをアップロードする方法です。
この実施方法では、外部のCRMやMAから抽出したユーザーリストや、購買データを元に作成したリストを取り込んで、セグメントした施策が打てるようになります。
【2】会員連携を行い、CMS上でセグメントを指定する
ユーザー属性や会員種別はMGReのカスタマイズで会員連携を行えば、連携元の会員システムの情報でMGRe上でもセグメント設定できるようになります。
セグメントを行う上での注意点
セグメンテーションはマーケティングに効果的である一方で、誤った使い方をすると思わぬ落とし穴もあります。
セグメントを活用する際には、以下の3点に注意しましょう。
最適なセグメント規模で行う
セグメントでは、全体>属性>行動(購買など)といったように、クラスター(ユーザー集団)が細分化されていきます。
下図のように、深い層(下側)に行けば行くほどクラスター規模は小さくなっていき、より個人の趣味趣向に近い配信ができると言えます。
セグメントを過剰に行いすぎると、本来その情報を受け取りたいユーザーに届かなくなってしまったり、手動の場合にはユーザーIDの振り分けなどの運用負担やコストがかかるといったリスクがあります。
加えて、セグメントが細分化されるほど、ユーザーのニーズはニッチになります。その分、対応コンテンツのバリエーションが求められる点も考慮が必要です。
反対に、セグメントが不足しているとユーザーのニーズに合わない発信をしてしまう可能性があるでしょう。
セグメント分けの際には、最適なクラスター規模を見極めた上で進めましょう。
セグメントは定期的に見直す
セグメンテーションは一度行って完成というものではなく、定期的な見直しが必要です。
見直しをしないと、そもそもセグメントが間違っていたときに気付くことができません。過去に得た経験や情報がバイアスとなってしまい、思い込みでセグメントを行ってしまうこともあるでしょう。
また、時代の変化とともにユーザーにも変化が訪れます。過去に喜ばれたことが、この先も喜ばれ続けるとは限りません。
だからこそ、コンテンツ自体も改善をして磨きをかけていく必要があるでしょうし、セグメントの分け方自体を見直してみることも大切です。
定期的なメンテナンスを行いながら、セグメント活用をしましょう。
プライバシーを考慮した上で行う
昨今、サードパーティークッキーの廃止が騒がれたり、アプリを利用する際のオプトイン(同意を得ること)が増えたりと、プライバシーを重要視する動きが強まっています。
特に、行動におけるセグメントを活用する場合には、ユーザーが気持ちよく情報を受け取れるような配慮が不可欠です。
シスコが2021年に実施した調査では、消費者の約半数が「自身の個人データを保護できていないと感じている」と回答しました。
また、76%が「自分のデータを企業がどう使っているのか把握するのが困難」、36%が「プライバシーポリシーを企業が遵守しているとは思えない」と回答するなど、データ取り扱いの透明性についても懸念の声が挙がっています。
■出典:「シスコ 2022 データ プライバシー ベンチマーク調査」(シスコシステムズ合同会社)
このような背景からも、セグメンテーションを行う際には、ユーザーが不信感を抱くことが無いよう、慎重に考慮した上で発信をしましょう。
まとめ
今回は、セグメント(セグメンテーション)の概要と具体的なやり方、またセグメント活用時の注意点についてお伝えしました。
顧客は、自分に合う情報を受け取りたい一方で、プライバシーに関する懸念も一定持っています。
適切なパーソナライズと顧客心理に寄り添ったプライバシーの配慮の上、セグメントを活用してマーケティング活動を加速させましょう。
アプリ制作プラットフォーム「MGRe(メグリ)」では、あらゆるコンテンツ配信機能にセグメント機能を搭載しています。
MGReのアプリにおけるセグメント活用について興味のある方は、こちらの記事もあわせて参考にしてみてください。(※外部サイトに飛びます。)