CRMとは?基礎知識をまるごと解説!解決できる課題や機能、選び方、注意点など

CRMとは、顧客との関係値を維持・向上していくことにより利益を最大化させる考え方、およびツールのことを指します。

「1:5の法則(※¹)」というマーケティングの概念があるように、自社の利益を上げるためには、新規顧客獲得に注力する以上に既存顧客との良好な関係を維持し続ける必要があります。

本記事では、見込み顧客や既存顧客との関係維持・向上に役立つツールであるCRMとは何か、解決できる企業課題や機能、自社に合うツールの選び方、導入時の注意点に至るまで紹介していきます。

<こんな方におすすめ>

  • CRMとは何かを知りたい方
  • CRMの導入を検討している方
  • CRMのメリットや活用のコツを知りたい方

 

※¹ 新規顧客を獲得するためには、既存顧客の5倍のコストがかかる、という考え方のこと 

CRMとは

CRM(Customer Relationship Management・シーアールエム)とは、顧客情報を適切に管理し、顧客満足度や利益の向上に繋げるマーケティング手法です。

CRMには「考え方・概念としてのCRM」と「システム・ツールとしてのCRM」の2つの捉え方があります。本記事では後者のシステムやツールとしてのCRMを紹介しますが、それぞれの概要を先にお話しておきます。

“考え方”としてのCRM

CRMは日本語で「顧客関係管理」と訳されます。つまり、顧客との関係維持のために情報を管理することはすべて、広義では“CRM”であると言えます。

例えば得意先の好む商品をメモに取ったり、顧客の特徴を関係者に共有したりすることも、日常的な業務に感じられるかもしれませんが立派な顧客管理です。こういった慣習は、お金の誕生よりも古いとも言われ、最初に作られた交易(売買)記録は2万年前にさかのぼります。(※²)

本質的には、顧客の情報をきちんと把握し、その情報を基にさらなる商いの拡大を狙うということがCRMの考え方です。

日本国内でCRMの概念が確立されたのは、1998年に出版された書籍『CRM-顧客はそこにいる』(アンダーセン・コンサルティング、現アクセンチュア 著)がきっかけと言われています。

※² 参考:『The Complete History of CRM』https://www.salesforce.com/ap/hub/crm/the-complete-crm-history/

“システム/ツール”としてのCRM

上記の考え方をベースとして、顧客情報を自動で一元管理できるようにしたものが、システムやツールとしてのCRMです。

古くを遡ると、1950年代後半には情報を記録したり自動化に向けた取り組みがされており、1980年代にはデータベースを分析して、顧客にどのようにアプローチするかを特定するような形での、世界で初めての“自動CRM”が発明されたと言われています。

その後、1990年代には後続の製品が多数開発されるようになり、今私たちの知るCRMサービスへと成長していったのです。

先ほどお伝えしたように、本記事ではこのツールとしてのCRMの特徴を解説していきます。

SFA/MAとはどう違う?

CRMと合わせて利用されることの多いツールに、SFAやMAなどがあります。これらとの違いは以下の通りです。

SFAとの違い

SFA(Sales Force Automation・エスエフエー)とは、主に営業活動支援のために提供されるデータ管理ツールのことで、日本語では営業支援システムと訳されます。

最近では、SFAとCRMが一緒になっているツールが多く、SFA単体を導入しようという動きはあまり多くはないかもしれませんが、「主に営業が活用するのはSFA、マーケターが活用するのはCRM」だと認識しておくと良いでしょう。

MAとの違い

MA(Marketing Automation・エムエー)は、主にメールマーケティングなどで活用されるツールで、顧客情報の収集やマーケティング施策の評価・分析を行えるものです。

具体的には、メール配信などを通し顧客にコンテンツを届けることで、その顧客の反応や行動を追い、その施策の成果を測ることができます。CRMとの関係性については、MAで得られた顧客情報をCRMに集約できる点にあります。

CRMの機能と社内での利用イメージ図

CRMで解決できる課題

CRMを活用することで解決できる課題には、大きく分けて3点あります。

  • 成約率が低い
  • 客単価、LTVがなかなか上がらない
  • 情報管理にバラつき・問題がある


あなたの組織で上記に当てはまるものがある場合、CRMを導入することで改善できる可能性があります。
それぞれ見ていきましょう。

成約率が低い

CRMは受注率の向上に役立ちますが、ひと言に「成約率が低い」といっても、原因はさまざまです。

まずは、どの段階で取りこぼしが起きてしまっているのかを知ることが大切です。

<商品購入・契約までの一般的な流れ>

【1】初回コンタクト
【2】アポ・ヒアリング
【3】提案・商談
【4】クロージング
【5】契約締結および購入

CRMを活用すれば、上記5つの段階を振り返り、目標達成率が低いのはどのフェーズかを知ることができます。課題があるポイントが判明した場合には、状況に合わせて下記のように深ぼりしてみましょう。

新規開拓はできるが、アポに繋がらない場合

見込み顧客(リード)の確保はできているけれども、メールや架電等に対する反応が少ない場合、自社との親和性が低い相手にアプローチしてしまっている可能性が高いです。

このような際には、既存顧客のリストから顧客情報を確認するのが効果的ですが、目視でリストを確認するのは骨の折れる作業です。CRMがあれば自動でフィルタリング、タグ付けやグラフ化により顧客の状態を可視化できるため、欲しい情報をスピーディに見られます。

アポは取れるが、提案・商談に繋がらない場合

CRMは自社からのコミュニケーションに対する相手の反応を履歴として残せるため、自社と相性の良い顧客はどのような属性かを振り返ることで、アプローチ内容を改善するヒントになります。

<顧客属性の例>

  • BtoBの場合…業種、地域、事業内容、ビジネスモデル、会社規模
  • BtoCの場合…年齢、性別、職業、地域、収入、家族構成


上記はあくまで一例ですが、このように顧客の特徴を切り分け、成約に繋がりやすい顧客はどの属性に当てはまるのかを考えてみましょう。

提案・商談はできるが、成約に繋がらない場合

CRMを活用すれば、上記【1】~【5】どの段階に問題があるのかを可視化できるため、成約に至っている顧客、至っていない顧客の違いを比較し分析できます。

ある特定の属性が受注しやすいと分かれば、優先するべきターゲットが見えるようになってくるので、自社の成功パターンとして応用できます。

客単価、LTVがなかなか上がらない

顧客数はある程度いるにもかかわらず、目標とする客単価が低かったり、顧客一人(一社)当たりから得られる利益が低い場合にもCRMは役立ちます。

  • 購買単価
  • リピート率(継続率)


上記に課題がある場合、顧客満足度を高めたり、適切なコミュニケーションを増やすことで利益向上を狙えるため、CRMの顧客管理機能やメールなどのコミュニケーション機能が役立ちます。

加えて、ここでも属性分析は効果的で、一人当たりの顧客単価、顧客の属性、どういうアプローチのもと購買/成約に至ったかを知ることで今後の戦略立てに活用できます。

イベントなどのキャンペーンを振り返れば、成果が上がった効果的な施策を見つけるヒントになるかもしれません。

情報管理にバラつき・問題がある

今までに顧客から「また同じことを聞かれるのですか?」「それは他の担当者に伝えました。」などの意見・感想が届いたことはないでしょうか。

これは顧客情報の管理方法に抜けがあると陥りがちな問題で、顧客満足度の低下を引き起こす恐れがあります。顧客情報を部署ごとにバラバラに管理している場合は、CRMで一元化することで上記の不満を防げるでしょう。

また、社内で違う方法により情報管理してしまうと重複管理にも繋がり、社員同士で無駄な工数がかかったり、更新漏れなどのミスを誘引するリスクにもなります。

CRMのデメリット

CRM導入において考えられるデメリットは、以下の3つです。

コスト(費用)がかかる

CRMは定額制のクラウドサービスであることが多く、導入時の初期費用に加えて継続的に発生するランニングコストもかかります。

「導入した結果、いくら儲かりました」という直接的な営業成果が見えることのない、バックオフィス的なツールのため、コスト面での懸念を払拭しにくいのはデメリットと言えるかもしれません。

定着までに一定の時間と手間がかかる

CRM導入は組織全体に関わる上、運用に慣れて効果が出るまでには時間がかかります。

導入推進をする担当者にとっては、メンバーに展開していく上で、CRMに関する知識やスキルを身に着ける必要があります。それなりのインプットが必要なので、導入時期の負担は大きいでしょう。

また、運用をする担当者にとっては、これまでとは違うフローでの記録・管理方法にシフトしなければなりません。

このような理由から、導入時のメンバー負担は避けられないことと言えます。

ツールによっては、DXの足かせになる

CRMのサービスの多くはクラウド上で提供されています。既にあるパッケージをインターネット上で利用できるため、導入コストが抑えられる一方で、MAなど他ツールとの連携ができるか否かはベンダーの開発状況に依存します。

CRMは顧客情報をひとまとめに束ねられる“ハブ”的な存在ですが、他ツールとの連携が取れていなければ本来の役割を果たせません。DX推進を行いたい場合や一元管理をしたい場合、CRMのシステムが他ツールと連携可能かは必ず確認しましょう。

CRMにはどんな機能がある?

ダッシュボード機能

ダッシュボードは、今のマーケティングや営業成果をひと目で確認できる機能のことです。

見たい指標を設定しておけば、自動でグラフ化を行い数値を見せてくれるので、担当者からマネジメント層まで幅広い立場のメンバーが活用できます。

<活用シーン>

  • 自社の業績予測をしたいとき
  • KPI/KGIの確認をしたいとき
  • 広告やSEOの成果などを知りたいとき

リード管理機能

自社のリードの属性を管理できる機能で、狙うターゲットであるかどうかもフィルタリングできるのが特徴です。

<活用シーン>

  • リードの属性を知りたいとき
  • リードへの配信コンテンツの成果を振り返りたいとき
  • リードの流入経路や動き方を振り返りたいとき
  • リードに対しコミュニケーションを取りたいとき(メール配信等)

キャンペーン機能

リードや既存顧客に対し、イベント情報、コンテンツやメール配信を行った際の成果を測れる機能です。どのような内容を送った結果、どのような顧客から反応があったのかを把握することができ、施策の分析に生かせます。

<活用シーン>

  • マーケティング施策の効果を測りたいとき

レポート機能

取引先、売上予測、キャンペーン、商品価格などさまざまな切り口からレポート作成ができます。どのような情報をどう見せたいかを設定すれば、その情報に関するレポート作成を自動で行ってくれるため、会議などでの資料作成の手間を最小限にできます。

<活用シーン>

  • 社内に現状共有したいとき
  • リード(見込み顧客)の流入状況を確認したいとき
  • データを多角的に分析したいとき

取引先管理機能

既存顧客とのコミュニケーションの記録、行動履歴を確認できる機能です。顧客関係維持・向上に対して重要な機能であり、売上や利益の最大化を狙いたいときに活躍します。

<活用シーン>

  • アップセルやクロスセルの商談管理
  • 顧客対応において、過去の行動履歴を遡りたいとき
  • 顧客からの意見/感想があり社内に共有したいとき

自社に合うCRMシステム/ツールを選ぶコツ

CRMの主な機能は紹介しましたが、実際にどのようなCRMを導入すると良いのかは組織によって異なります。CRMを導入する際には、以下の5つのポイントを押さえましょう。

目的を明確にする

CRMには、SFAがメインのCRM、MA寄りのCRMなどがあり、ツールによって得意領域は変わってきます。そのため、まずは社内でのCRM導入目的を明確にし、自社に合う特色を持ったツールを導入しましょう。

  • CRM導入により得たい効果は何か
  • どのような運用計画のもと活用していくのか
  • 導入効果はどのように評価するのか


上記をしっかりと社内で話し合った上で、納得感があるツールが見つかった際に導入を検討しましょう。

「他社も導入しているから」「マーケティングに良さそうだから」といったような漠然とした理由で導入すると失敗しやすいので注意しましょう。

予算に合うか確認する

繰り返しにはなってしまいますが、CRMには、月額制など定期的な支払いの発生する料金体系のサービスが多いです。

そのため初期費用だけでなく、継続的に利用する上でのコスト感が自社に合っているかは重要なポイントです。オプション機能の利用を想定する場合には、その金額も加味して慎重に判断することをおすすめします。

操作性を事前確認する

CRMは、現場の担当者から経営者まで、さまざまな立場やリテラシーレベルのメンバーが利用するツールです。適切な情報管理をするためには、きちんとすべてのあるべき情報が入力されている必要がありますが、それには顧客やサービス提供に関わる全員がシステムを使いこなせる必要があります。

いくつかのデモを触ってみて、メンバー同士でフィードバックを行いながら比較検討すると良いでしょう。

同業他社での導入実績があるか調べる

「CRMにはツールごとに特色がある」とお伝えしましたが、自社に合うCRMを導入する判断軸として、同業他社や競合企業での導入実績があるか否かは確認しておくと安心でしょう。

可能であれば、自社と似た業種/業態、規模感の企業であったり、似たような課題を抱えていたケースでの導入事例はあるか、ベンダー担当者に確認してみるのが確実です。

外部システムとの連携が可能か確認する

CRMは、1人(1社)の顧客に対し1つのIDを付与することで、顧客の行動や購買履歴も含めた情報管理ができるシステムです。

反対に言うと、他のツールとの連携が行えない、追加開発ができないようなCRMシステムの導入はかなり慎重に考えた方が良いでしょう。せっかくコストをかけて導入しても、思うような情報管理や情報のデータベース化が行えない可能性があります。

既に自社で活用している他システムはもちろん、将来導入する可能性のあるツールともスムーズに連携ができそうかチェックしておきましょう。

CRM導入後の注意点

さいごに、CRMを導入する際に気を付けておきたい点をお伝えします。

社内周知やフォローを丁寧に行う

CRMがその力を発揮するのは、情報が入力された後です。つまり関係者に利用されなければ導入する意味はありません。

出来るだけ精度の高い情報管理・分析を行うためにも、社内メンバーへの周知や使い方のレクチャー等、フォローアップは丁寧に行いましょう。

提供企業によっては、カスタマーサポート/カスタマーサクセスやオンライン勉強会、教材配布を積極的に行っているところもあります。そういったフォローアップ制度の整ったベンダーを選び活用することをおすすめします。

適切な入力項目を設定する

例えCRMを導入しても、その中に顧客情報が網羅されていなければ、適切なアクションをとることはできません。そのため、社員が積極的にCRM内に記録できる環境づくりが大切です。

ここで重要なのは、必須入力項目数が多すぎたり、重複した入力項目があったりしないか確認することです。

あまりに項目が多いと“埋めること”が目的になってしまったり、入力が億劫になりメンバーに活用してもらえないことも起こりやすいです。加えて、他者が見るときにどこを見たら良いのか分からなくなるのもネガティブなポイントです。

データ・情報を活用する体制を作る

CRMの大きな特徴としては、きちんと適切に活用すれば成果が出る一方で、導入しただけで何かが劇的に変わることは無い、ということです。より多くの有益な情報をCRM内に集めて活用するためにも、以下を意識し運用していきましょう。

  • 情報の一元化
  • 各会議体での活用
  • 現場の意見を聞き、運用改善に生かす


例えば、ドキュメントや表計算ソフト、資料で管理している情報の中にCRM内に入れられそうなものがあれば、出来る限りCRM内に集約します。

CRMのダッシュボード機能を活用して現状共有をしたり、サポート履歴を遡り顧客対応の改善に繋げるなど、各会議体で活用すると社内での目線合わせをしやすいです。

まとめ

どの企業にも共通して、ビジネスの拡大や存続と深い関係を持つ顧客情報。顧客の行動や言動、基本情報をしっかりと把握することで、顧客満足度向上や満足度の高い顧客体験の提供に繋がります。

  • 概念、考え方としてのCRMとシステム・ツールとしてのCRMがある
  • CRMはさまざまなマーケティングツールを束ねるハブ的な存在である
  • CRM導入時には、情報入力を怠らないことと、他システムとの連携可否を確認する


上記のポイントを押さえ、自社に合うCRMの取り入れ方を見つけましょう。

小売業におけるCRMのシステム連携について、下記記事で図解を用いて触れているので、ぜひ併せてお読みください。